と言って龍馬はすぐさま大小を差しまして、高杉晋作からもらいました護身用のリボルバーを持ちますと、行灯をふっと吹き消した。すると幕吏、数十人がバラバラバラと階段を駆け上がってきて、
「問答無用でござる!」
「なにやつ! チャリン! えいや、えいや、えいや、えいや!」
「おのれ、うわー!」
「三吉、これは逃げるが勝ちだ、行くぞ!」
「ははー!」
二人は雨戸をバーンと蹴破り、屋敷を脱出。一目散に逃げ延びまして、ある材木小屋に身を隠し、一命を取り留めたのでありました。これが世にいう寺田屋事件でございます。
全身手傷を負った龍馬を見たお龍。
「龍馬様、龍馬様! 龍馬様? 大丈夫ですか」
「あはは、心配するな、わしは大丈夫じゃ。お前が知らせてくれなければわしは死んどった。うん、お龍、お前はわしの命の恩人、幸運の女神じゃ。一生わしのそばにおれ」
そんなわけで、絶体絶命の状況をともに乗り越えたことで絆が深まったんでしょう。龍馬とお龍はハネムーンのために、鹿児島の霧島へと旅立つわけでございます。これは日本で初めての新婚旅行といわれておりますが、この時、龍馬はまだ寺田屋で負った傷が癒えていなかったので、その静養も兼ねていました。
さて、龍馬は当時としては、良くも悪くも規格外の男でございます。男に惚れ、人生をともにするんですから、このお龍という女も、一通りではない女だったのかもしれませんね。
実は「気遣い」もできるやさ男
河合:いやぁ〜講談って、文字で読んでも頭の中にスッと入ってくるもんなんですね。蘭さんもおっしゃっているように、伏見の寺田屋で働いていたお龍は、風呂に入っていたとき危険を察知し、素っ裸のまま階段を駆け上がって、2階の龍馬に危機を知らせたので、龍馬は命拾いしました。
そんな龍馬は、姉の乙女に宛てて、「まことにおもしろき女」として妻のお龍のことを詳しく紹介していますが、その手紙の中で、「彼女に帯か着物を贈ってやってほしい」とお願いしているんです。おそらく龍馬は「これは姉さんがお前のために仕立ててくれた着物だよ」などと言って、お龍にプレゼントするつもりだったのでしょう。


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