試験運用の結果、同社によれば解析処理数量を倍近く増やせる見込みが示されました。検査は受注して報酬を得る事業そのものですから、処理数が倍になることは、同じ体制でより多くの案件を受けられる、つまり売上拡大の余地が広がることを意味します。熟練者でない担当者も検査業務に参加しやすくなり、対応できる人材の幅も広がりました。
暗黙知は、対話で初めて言葉になる
興味深いのは、味付けの中身がしばしばクライアント自身にも言語化できていないことです。AIで特定の業務を置き換えようとしても、いきなり人と同じ質でこなせることはまずありません。「なぜできないのか」を掘り下げていくと、「実は我々はこういうことをやっている」「こういう独自のノウハウがある」というように、暗黙知が対話を通じて初めて表面化してきます。カスタムAIの開発は単なる技術導入ではなく、自社の競争優位を再発見し、言語化するプロセスでもあるのです。
どこを汎用ツールに任せ、どこを作り込むか。判断の目安は3つあります。その業務に自社独自の暗黙知や競争優位が絡んでいるか。汎用ツールでその課題が本当に解けるのか。そして、投資に見合うリターンが見込める領域か。1つめがNOであれば汎用ツールで十分ですし、月額数万円のツールでクイックに成果が出るならそれを選ぶべきです。
この発想は、大企業よりもむしろ中小企業にとって大きな意味を持つかもしれません。世界屈指の材料技術を持つ企業、町工場の製造クオリティ、特定分野に特化した深い専門知識。こうした匠の技は世界的に見ても極めて高い優位性を持ちますが、効率性では大企業に及ばないことがほとんどです。裏を返せば、汎用AIツールでは代替できない暗黙知の結晶だからこそ、それを固有のカスタムAIで増幅できれば、規模の不利を独自性の優位で覆せる可能性が拓けます。効率化で満足せず、AIで自社をさらに唯一無二にできるかどうかが、勝負の分かれ目です。


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