しかしながら、アメリカの支配層は、少なくとも国民の4分の1程度を占めるといわれる経済的下層の人々を踏みにじって恥じない政策を行い続けてきているのだ。そんなアメリカの支配層が日本人を本気で守ってくれることを無条件に期待、信頼するとしたら、あまりにもナイーヴというものではないだろうか。
2017年からの1年間私が滞在していた「ハワイ州」でさえ、州民(日系人とは限らない)の間には、「いざとなったら政府はハワイを米中戦争の捨て石にしかねないのではないか?」との疑念をもつ人々がいたほどなのである。
また、アメリカ国民の日本に対する関心も、一般的にいえば、日本人が思っているほど高くはない。彼らが、きわめて強い精神的な絆を日本との間に感じているわけでもない(精神的な絆は、当然のことながら、イギリス等英語国民諸国との間のほうが強い)。
私の友人で、アメリカと日本を知り尽くしているあるアメリカ人日本研究者は、こう語っていた。「アメリカの庶民層には、日本の正確な位置を知らない人も多い。義務教育水準の低下した今日では、サウスダコタ州やアーカンソー州の正確な位置だって、皆が知っているかは疑問なくらいだ。また、そもそも、彼らは、日本を含め、外国のことなどにほとんど関心はない」
さらに、アメリカ人の多数派が、子ブッシュやトランプのようなアメリカ中心主義のポピュリストを2回ずつ大統領に選んできたことからもわかるとおり、アメリカにずっと潜在し続けていたアメリカ中心主義的・帝国主義的傾向が近年非常に強まっていることにも注意すべきであろう。近年のアメリカ社会における各種のマスヒステリア現象は、みずからの「神話」が破壊されてゆくことに対する暴発的防御反応なのだから、尾を引く可能性も、再燃する可能性もある。
もし台湾有事で「日本にミサイル」が落ちたら
たとえ台湾をめぐる米中戦争で日本にミサイルが落ちても、アメリカは「まことに尊い犠牲である」というだけのことで、さほど困るわけではない。当然に続くと思われる停戦交渉、駆け引きによって戦争がそこで終われば、台湾のほかには日本だけが致命的な打撃をこうむって幕引きという事態も十分にありうる(米中とも、全面的な米中戦争や第3次世界大戦を引き起こす覚悟まではないであろう。自滅するだけのことだからだ)。
この推測には、当然に反論がありうるだろう。しかし、「起こりうる事態」であることには間違いがないと思う。


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