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「GTO」作者が支えた酒蔵、二度の豪雨浸水で1万5500本を捨てても「消えなかった」理由…6代目は蔵から238の酵母をかき集めた

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2020年に発売した「GTO x RYUSEI THANK!」のラベルには、藤沢とおるさん描きおろしのイラストが使われた (©︎藤沢とおる)
2020年に発売した「GTO x RYUSEI THANK!」のラベルには、藤沢とおるさん描き下ろしのイラストが使われた (©︎藤沢とおる)(写真:筆者撮影)
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2株の蔵付き酵母を単離したのは、酵母を蔵に「放流」するためだ。

たとえば、安全な場所で、ホタルの幼虫をある程度の大きさまで育ててから川に放流すると、成長した幼虫はホタルになり、卵を産む。その卵から幼虫が孵る。これを繰り返せば、川のホタルは少しずつ増えていく。

義大さんは同じように、純粋培養した酵母を蔵に戻している。協会酵母に押されて蔵付き酵母が減っている蔵の環境を、昔に戻そうとしているのだ。

醸造中の酒のタンク。足元にある梯子にも目を向けてほしい。雑菌を居づらくさせるため、化学的な除菌剤ではなく、昔から使われている柿渋がこの梯子に塗られている。木の酒樽も同様に処理されていた(写真:筆者撮影)

「今は、酒造りの最初に培養した蔵付き酵母を添加しています。蔵付き酵母が少しずつ増えていけば、人工的な添加をやめる予定です」(義大さん)

昔の酒造りに戻るために、現代の科学を使う。一見すると相反するこの考え方が、160年以上続く酒蔵を支えている。

「この蔵でしか造れない酒」を

大量生産・大量消費の時代が終わりつつある中、「信念を持った酒造りをしている蔵が生き残る」と義大さんは考えている。

米にこだわる蔵は増えているという。ワインのように、米が育った風土も含めて酒の物語とする「テロワール」の考え方だ。

「しかし、土地の個性を酒に映し出すのが『テロワール』なら、米だけでなくその土地と蔵に棲む微生物の生態系も含めて考える必要があると思います。だから蔵付き酵母が重要なんです。この蔵でしか造れない酒を造ることこそが、テロワールではないでしょうか」(義大さん)

生酛造りの際に行う「酛摺り」の作業は「山卸し」とも呼ばれる。蒸米と麴と水を丹念にすりあわせる重労働だ。こうして米をとかすことで乳酸菌が働きやすい環境になる(画像:藤井酒造提供)

龍勢Lab.で試験的に醸した酒の一部は、消費者に頒布されている。一期一会の希少な酒との出会いは、日本酒好きにとって心躍るものだろう。個性を探る旅の物語を熱心なファンと共有しながら、藤井酒造は進んでいるのだ。

2023年、ついに藤井酒造は全量生酛造りを実現した。同年5月、「龍勢 活濁酒-八反35号-」は、広島県で開かれたG7サミットの乾杯酒として提供された。

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