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ライフ #安彦良和が語る ガンダム、漫画、アニメ

「シャアの行動、メンタリティーの根幹」「…非常に通俗的な解釈があった」安彦良和氏が語る「オリジン」過去編

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漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』の過去編に込められた思いとは(撮影:梅谷秀司)

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『機動戦士ガンダム』(1979年テレビ放送開始)のアニメーションディレクター、キャラクターデザインを担当したことで知られ、アニメ監督、漫画家として多くの作品を生み出してきた安彦良和氏(78)。東洋経済オンラインではロングインタビューを8回に分けて配信してきた。本記事では、その中から『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』の過去編について語った部分を抜粋してお届けする。
【連載一覧はこちら】
1回目:『オリジン』誕生前夜、いつまでも「ガンダムの安彦」と言われるのはごめんだと思っていた
2回目:「単純な勧善懲悪じゃないからいい」、富野由悠季のガンダムが薄っぺらな話のわけがない
3回目:クリエイターもファンの声に影響される 敵役が続編では味方になる訳、「Ζガンダム」への思い
4回目:『オリジン』と『SEED』、2作品で盛り上がった「ガンダム20周年」を振り返る
5回目:アニメが興行的にこけると、スタッフは"しけた人間"という扱いになってしまう
6回目:才能のあり方の違い、「遊び精神がないのが、"彼ら"に俺が勝てない原因だと思っている」
7回目:世界は社会主義以前に戻った、でも今はトランプがきらいなら「きらいだ」と言える
8回目:シャアもその"餌食"になったが、かつて若者に広がった「やおい」は偉大な文化だった

シャアの行動の根幹、メンタリティーの根幹に何があるのか

――『オリジン』の「過去編」は、ファーストガンダムを再提示するに当たって必要な要素を加えるために描いたと。

うん、そうですね。(アニメでは)敵役のシャアに大変人気が出たんですけれども、非常にわかりにくいキャラクターで。行動も首尾一貫していないように思えるし、彼のメンタリティーはどうなってんのという。まあ、「それがわからないところがいい」みたいなことはよくあるんですけどね。

だから、「わからないのがはたして欠損なのか?」という考えもあると思うけど、シャアに関しては、やはりそれではだめだろうと。わかる、あるいはわかる手がかりぐらいはなくちゃだめだろうと思って、生い立ちを描いたんです。

彼の行動の根幹、メンタリティーの根幹に何があるのか。僕は、それは復讐心だというふうに解釈したんだよね。仇(かたき)討ちなんだ。誰の敵討ちなのかというと、お母さんの仇討ち。お母さんは、オリジナルのTVシリーズではひとかけらも出てきていないんです。父親は過去にこういうことがあったというので顔を出しますけどね。

安彦良和(やすひこ・よしかず)/漫画家、アニメ監督。1947年北海道生まれ。70年からアニメーターとして活躍。『機動戦士ガンダム』ではアニメーションディレクター、キャラクターデザインを担当。『ナムジ』『虹色のトロツキー』など漫画作品も多数 。直近では、2025年9月に『半田銀山昔語り』、26年5月に『銀色の路-半田銀山異聞-』(上下巻)を出版(撮影:梅谷秀司)

「それではあまりにも薄っぺらだ」

――シャアの親世代の描写には、安彦さんが弘前大学で経験した60年代末の学生運動の経験が反映、投影されているのでしょうか。

若干していると思います。それは、「革命思想って何だ」というふうなことですね。だから「ジオニズム」を、マルクス主義に置き換えてもいいし、あるいはシオニズムに置き換えてもいい。

(ガンダムの世界には)1つの社会思想があったわけですが、それを肯定的に、もう無言のうちに肯定しちゃってるんだよね、オリジナルのガンダムってのは。そこに危ういものがあるんだという思いを僕は持っている。

まず、シャアには偉大な父親がいた。その人が導き手になって、ジオニズムという1つのムーブメントが発生した。そのムーブメントから生み出された鬼っ子が、ジオン公国だった。本来はもっと健全な国であるべきだったのに、父親はおそらく同志に裏切られ暗殺された。……と、そういう非常に通俗的な解釈があったわけですよ。

でも、それではあまりにも薄っぺらだというのが僕の考えだった。そうじゃないよ。それだと善悪二元論になっちゃうでしょ。そうじゃないんだよ。世の中ってそうじゃない。そう考えるのは、やっぱり僕自身の経験的なものがあると思います。

単にシャアの父親が善でザビ家が悪だとすると、ガンダムは薄っぺらな話になっちゃうんですよ。よくありますよね。聖人君子だった父親が悪い奴に殺されて子供が復讐する。

復讐というファクターはテレビのガンダムにもあったけど、テレビで描かれただけの材料で解釈しようとすると、どうしても単純な解釈になっちゃうんだよね。聖人君子の父親が人々を正しい方向に導こうとしたのに、逆臣に背かれて、非業の最期を遂げて、国も思想もおかしくなっちゃったって。でも、それだと本当にペラペラなんだよ。

シャアの過去を描くことは、同時にジオン公国とは何か、あるいはそれを支える思想「ジオニズム」とは何かに斬り込むことでもある。もし、それが薄っぺらなものだったら、ガンダム世界はどうでもいいペラペラなものになるわけですよ。でも、富野由悠季という原作者を僕は知ってますから。彼のある部分を非常に評価してますから。彼の考えたものがそんなペラペラのものであるわけがない。

【連載一覧はこちら】
1回目:『オリジン』誕生前夜、いつまでも「ガンダムの安彦」と言われるのはごめんだと思っていた
2回目:「単純な勧善懲悪じゃないからいい」、富野由悠季のガンダムが薄っぺらな話のわけがない
3回目:クリエイターもファンの声に影響される 敵役が続編では味方になる訳、「Ζガンダム」への思い
4回目:『オリジン』と『SEED』、2作品で盛り上がった「ガンダム20周年」を振り返る
5回目:アニメが興行的にこけると、スタッフは"しけた人間"という扱いになってしまう
6回目:才能のあり方の違い、「遊び精神がないのが、"彼ら"に俺が勝てない原因だと思っている」
7回目:世界は社会主義以前に戻った、でも今はトランプがきらいなら「きらいだ」と言える
8回目:シャアもその"餌食"になったが、かつて若者に広がった「やおい」は偉大な文化だった

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