また盆栽は鉢植えと違い、種から育てることが少なく、苗木などから育てるのが普通です。
こうした盆栽用の苗木を畑で生産している、専門の農家もあります。有名なのは香川県高松市の鬼無(きなし)、そして埼玉県川口市の安行(あんぎょう)です。
この2つの町は、松の苗木の生産地であり、盆栽産業の拠点とさえ呼ばれます。
しかし盆栽界でも名木となってくると、その多くは苗木から育てたものではありません。山などの険しい土地で、小さなまま歳月を経て育った樹木を探し出し、採取してきたものです。
こうした樹木は人が苗から育てた樹にはない、思いもよらない枝ぶりをしている場合があります。こうしたある種の野性味を活かしながら、時間をかけて盆栽に仕立てるのです。
このような、山から採ってきた盆栽は、特に「山採り」と呼ばれています。
もちろん、苗木から育てた、あるいは種から育てた名木もあります。山採りと違って穏やかな枝ぶりのものが多いですが、時間をかけて丁寧に形を作れば立派に育っていきます。
大宮盆栽美術館には貴重盆栽第1号に指定されたカリンの名木があります。こちらは昭和戦前期には、東武鉄道を経営していた初代根津嘉一郎が所持し、戦後には元首相の佐藤栄作、その実兄である岸信介などが所持しました。
このカリンの盆栽などは、苗木から育てた名木の代表格となっています。
盆栽愛好家が旅行に行きたがらないワケ
盆栽は生き物です。このため日々の世話が欠かせません。
まず何といっても水遣りです。盆栽は鉢の中の水分で生きているため、乾燥した分の水を補充してやらないといけません。
また芽摘みや剪定、植え替えにも、それぞれ適した時期があります。
そして虫も盆栽の大敵です。コガネムシなどが盆栽の鉢に卵を産み付けてしまうと、幼虫が根を食い荒らしてしまうのです。このため愛好家は、虫が寄ってくると追い払っています。
こうしたさまざまな日常の管理が必要であるため、盆栽愛好家は気軽に旅行に行こうとしません。
このように世話が必要であるという点は、ペットとよく似ていますね。ただしペットとちょっと違っているのは、動物であれば旅行の時にペットホテルに預けられるという点でしょうか。
ちなみに私の父は、旅行に出かける時には、盆栽の水遣りを近所の方や親類に頼んでいました。

