フィリピン南部ミンダナオ島西部やスールー諸島の一部で9月14日、バンサモロ自治政府(議院内閣制)の正式発足に向けた議会選挙が初めて実施される。分離独立を求めたイスラム武装勢力とフィリピン政府の半世紀にわたる紛争を終結させる和平プロセスのメルクマールとして、日本政府にとっても重要な選挙だ。なぜか。
日本政府が主に国際協力機構(JICA)を通じて、「平和の配当」を住民らが実感できるよう、計約600億円をつぎ込んでインフラ整備や貧困削減に取り組み、行政職員教育や武装解除を後押ししてきたからだ。
21世紀に入り日本外交が力を入れてきた「平和構築事業」の成功例として評価されるかどうかは、投開票が平穏に進み、民意に基づく本格自治に移行できるかどうかにかかっている。
半世紀の紛争、15万人の犠牲者と数百万人の避難民
バンサモロとは、マレー系言語で民族や国民を意味するバンサと、イスラム教徒を指すモロを組み合わせた言葉だ。バンサモロ基本法では、ミンダナオ島西部および島嶼部に昔からいた子孫たちと定義されている。イスラム教徒だけではなくキリスト教徒や少数民族も含まれる。
キリスト教徒が9割近くを占めるフィリピンにあって、バンサモロ地域に限れば逆に9割がイスラム教徒だ。13世紀ごろにこの地域に伝播したイスラム教を信じる人々は、16世紀に進出してきたスペインの支配に抵抗した。19世紀末にスペインからアメリカの統治に代わると、キリスト教徒の入植が本格化し、各地で対立が激化した。
現大統領の父であるマルコス元大統領の独裁政権下にあった1970年代に独立や自治を求めて武装組織モロ民族解放戦線(MNLF)が旗揚げし、後に分派したモロ・イスラム解放戦線(MILF)も武装闘争を展開した。半世紀にわたる紛争で約15万人が死亡し、数百万人が避難民となったとされる。


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