40人ほどから似たようなテンプレート返信が届くなか、ひとりだけ違う男性がいた。自分の経歴や暮らしを、きちんとした文章で説明している。6歳年上でアメリカ出身。
当時、まゆこさんの自宅のネット環境は不安定で、ビデオ通話はほとんどできなかった。やりとりはテキストメッセージが中心。腱鞘炎になるほど、毎日メッセージを送り合った。
結婚観、子どもが欲しいか、仕事をどう考えているか。そうした質問にきちんと答えてくれることが、まゆこさんの中で「結婚相手として大丈夫かどうか」の判断基準になっていた。
「今考えたら、まあまあ頭おかしいですよね」
まゆこさんは、当時を振り返るたびにそう自分に突っ込みを入れる。だが、その言葉の背景には「早く結婚したい」という切実な焦りがあった。
「全部が早すぎたんです。結婚までをショートカットしようと思って」
結婚の話はトントン拍子に決まった。しかし、一度も会わずに結婚するのもいかがなものか――。
管理職として働くまゆこさんにとって、平日の休みを取ること自体が簡単ではなかった。それでも同僚が背中を押してくれ、1泊2日というタイトな日程でアメリカへ飛んだ。
初対面。顔を合わせた瞬間、「うん。大丈夫」と思った。違和感はなかった。1日に満たない滞在――。冷静に考えれば拙速とも言える判断だが、それでもまゆこさんは、その場で結婚を決意する。
「定職に就いている」はずだった夫のリアル
婚約者ビザの発給には、約1年を要した。
まゆこさんは長年勤めた仕事を退職。アルバイトで資金を貯めながら、日本で過ごせる残りの時間は、大好きなフラダンスや友人との時間に充てた。
そして、ようやくビザが下り渡米。すると、思いがけない事態が待っていた。


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