最後に紹介したいのは、聖光学院中学校・高等学校の工藤誠一校長による『VUCA時代を生き抜く力も学力も身に付く 男子が中高6年間でやっておきたいこと』です。
勉強を続けるためには、「テストでいい点を取る」「いい学校に入る」だけでなく、その先にどんな人生があるのかを考えることが大切です。
本書では、東大合格者を多数輩出する聖光学院が、学力だけを伸ばしてきたわけではないことが語られています。リベラルアーツ、芸術、アウトドア、人との交流など、一見すると大学受験に直結しない活動を重視してきた。それが結果として、自分で考える力や困難から立ち直る力、そして学力にもつながったというのです。
もちろん、タイトルに「男子」とありますが、書かれている「自立を促す関わり方」「自ら考える力」「変化の激しい時代を生きる力」は、性別にかかわらず参考になる部分があります。
勉強は、人生の目的そのものではありません。しかし、世界を広げ、自分の可能性を増やすための重要な道具です。将来像が少しでも見えると、「なぜ今、勉強するのか」も理解しやすくなります。
この本は子どもだけでなく、保護者が一緒に読むのもおすすめです。むしろ親の側が、「いい点数を取らせること」だけに集中しすぎていなかったかを振り返るきっかけになるでしょう。
「勉強しなさい」を、本棚からのメッセージに変える
子どもに本を渡したからといって、翌日から毎日3時間勉強するようになるわけではありません。
本を買って机の上に置き、「読んだ?」「いつ読むの?」と催促すれば、それも結局は新しい形の「勉強しなさい」になってしまいます。
大切なのは、親が選択肢を渡し、少し待つことです。
「あなたにはこの方法が合う」と決めつけるのではなく、「こういうやり方もあるみたいだよ」と差し出す。「全部読みなさい」ではなく、「気になるところだけ見てみたら」と伝える。そして、子どもが何か試したら、その結果だけでなく、自分で選んだことを認めるのです。
小学生の勉強では、親が前を歩いて子どもを引っ張る場面も多いでしょう。しかし、中学生になったら、親は少しずつ横に並び、最後には後ろから見守る側に回らなければなりません。
「勉強しなさい」という言葉は、その場では子どもを机に向かわせるかもしれません。
しかし、本を通じて「なぜ学ぶのか」「どう学ぶのか」を知れば、親がいない場所でも、自分で勉強を始められる可能性があります。
親の小言は、その場で消えていきます。しかし、本の中で出会った言葉や考え方は、何年も子どもの中に残ることがあります。
中学生になった子どもに本当に渡すべきなのは、勉強の命令ではありません。
自分で学び始めるための、最初のきっかけなのです。



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