出産を背景とする産後うつには、大きな特徴があります。それは、産後うつは「母親だけの問題ではない」という点です。実は、夫も同じように産後うつを発症することがわかっており、産後うつは決して女性だけに特有の疾患ではないのです。
夫が仕事を終えて家に帰ってきたとき、妻がかわいい子どもと笑顔で健やかに過ごしていてくれれば、それに越したことはありません。
しかし、妻が産後うつにかかっていると、家庭内の空気は重く張り詰めています。
私が苦しいのは全部あなたのせい
うつ病の症状というと、ただ元気がなくなって、大人しくなってしまうだけと思われがちです。しかし、実際はそれだけではありません。物事を被害的にとらえてしまうのも、うつ病の特徴的な症状です。物事を被害的にとらえてしまうあまり、周囲を激しく責め立てる「他罰的」な状態になることがよくあります。
「私がこんなに苦しいのは、全部あなたのせい」「あなたが育児を手伝ってくれないから、こうなったのよ」という具合です。
仕事で疲れて帰宅した夫が、このように執拗に責められてしまう。すると、育児で疲弊している妻を支えなければならない夫のほうも、精神的に激しく消耗してしまうのです。
私は、診療しているクリニックで、「産後うつの妻と一緒にいるうちに気持ちが落ち着かなくなった」「妻から責められ続け、自分も死にたいと思うようになった」という心の内を訴える患者さんを、わずか半年の間に数名診察しました。
そのうちの1人は、自殺をほのめかすほど重度のうつ病になっていたので、命を守るために、緊急避難として精神科の病院に入院させたほどです。産後うつは、母親1人の問題にとどまらず、家族全体を巻き込み、場合によっては家族まで命の危険にさらしてしまうほどの深刻な病気なのです。


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