これもまた、はっきりしています。
というのは、これまで私が臨床医として、うつ病の患者さんと接した経験でも、まるで「うつがうつってしまったようなケース」に出合ったのは一度や二度ではなく、決して珍しいことではないからです。
その経験から「うつは伝染する」ことがある。あるいは、「うつはうつる」ことがある。そういってもよいのではないかと思っています。
ここで、私が診療した「うつがうつった」といってよいケースを紹介しておきましょう。
最近、社会的な関心が高まっていることの1つに、産後うつがあります。ふつう出産後の女性といえば、血を分けた新しい小さな生命との出会い、そして母親になった喜びで、幸せにあふれているイメージがあります。
ところが一方で、子育てに伴う心身のストレスだけでなく、「うまく子育てができるだろうか」「出産後にきちんと職場復帰できるのだろうか」といった将来への過度な不安などが重なり、非常に強いうつ状態に陥ってしまう新米の母親たちが少なくないのです。
これが、いわゆる「産後うつ」です。
産後女性の死因1位は自殺
この産後うつに関連して、目をそむけてはならない深刻なデータを紹介しておきます。20代、30代の「赤ちゃんを産んだばかりの母親世代」において、その死亡原因の第1位は「自殺」という事実です。
それも、がんや心疾患といった身体疾患を大きく引き離して、ダントツの1位なのです。
この世代は本来、肉体的には非常に元気で、病気や事故で亡くなること自体が珍しい年齢層です。それにもかかわらず、多くの女性が自ら命を絶っている。その背景にあるのが、この産後うつという病気です。


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