22年10月には、大阪急性期・総合医療センターが攻撃を受け、電子カルテを含む総合情報システムが利用できなくなりました。救急診療、外来診療、予定手術などに大きな支障が生じ、全面復旧までに約2カ月半を要しました。
侵入経路になったとみられるのが、給食業務を担う委託事業者です。調査報告書では、給食事業者が運営する給食システムに、リモート保守用として設置されていたVPN機器の脆弱性(セキュリティ上の弱点)が悪用され、病院の給食サーバーを足がかりに院内へ侵入された経緯が示されています。
給食事業者が電子カルテ停止のきっかけになったことを、意外に感じるかもしれません。しかし、患者の病状やアレルギーに応じて食事を管理するには、両者のシステムを接続する必要があります。医療を円滑に提供するための「つながり」が、攻撃者にとっては侵入経路になり得るのです。
Change Healthcare社では、共通の請求・決済基盤の停止が全米へ波及しました。国内事例では、電子カルテや基幹システムの停止が診療、救急、手術を直撃しました。攻撃起点と影響範囲は異なりますが、院内のシステムを守るだけでは、接続先や委託先を経由した侵入や、外部事業者の機能停止による影響を防ぎきれないという構造は共通しています。病院のサイバーリスクは、もはや院内の対策だけで守り切れるものではありません。
1つの病院の機能停止、その影響は地域全体へ
病院のシステム障害は、院内の一時的な「不便」では済みません。影響は患者の命や健康、職員の業務、病院経営、地域医療全体へ広がります。
救急受け入れが止まれば、患者は別の病院へ搬送されます。搬送先が遠くなれば治療開始が遅れるおそれがあり、周辺病院に患者が集中すれば、医師や看護師、病床への負荷も増大します。一つの病院の業務停止による負荷が周辺病院へ波及し、地域の医療提供体制を圧迫するのです。


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