医療機関にとって、診療を行っても診療報酬請求ができず、入金を受けられない状態は深刻です。特に手元資金が限られた診療所や薬局では、職員への給与支払いや医薬品の仕入れにも影響が及びかねません。親会社のUnitedHealth Groupは、資金繰りに支障をきたした医療提供者に多額の資金支援を実施しました。
注目すべきは、影響を受けた医療機関の多くが直接攻撃されていなかったことです。医療業界で広く利用されている共通基盤が止まり、その影響が接続先へ一斉に波及しました。たった一社への攻撃が、多数の医療機関を巻き込み、業務、ひいては経営に影響を与え、全米規模の医療インフラ障害へと発展したのです。
攻撃者は、盗まれた認証情報を悪用して同社のリモートアクセス環境に侵入したとされています。その入り口には多要素認証が設定されていませんでした。
しかし、教訓を「1つの認証設定の不備」で終わらせてはなりません。本質的な問題は、医療に不可欠な機能が特定のデジタル基盤に集中し、それが止まった場合の影響範囲を利用者側が十分に把握できていなかったことにあります。
つるぎ町立半田病院では電子カルテが停止…
日本でも、ランサムウェア攻撃によって電子カルテが使えなくなり、診療を長期間制限した事例が相次いでいます。
21年10月、徳島県のつるぎ町立半田病院では、電子カルテをはじめとするデータが暗号化されました。診療記録を確認できず、新規患者の受け入れ停止や通常診療の制限を余儀なくされ、紙カルテによる代替運用で診療をつないだものの、通常診療の再開までには約2カ月を要しました。


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