サムスングループや現代自動車グループが複雑な循環出資体系を維持している一方、SKグループやLGグループは持ち株会社化により比較的シンプルな出資体系をとるなど、グループごとに細かな違いはある。しかし、大財閥はおおむね、実質的な経営支配が可能になる50%前後の内部持ち分率を維持している点は共通している。また、総帥の地位は原則として血族継承だ。
このような内部持ち分による支配力を背景とした、創業家出身の総帥による強力なトップダウン経営こそが、財閥グループの強みである。この仕組みが迅速な経営判断や、長期的なリスクを恐れない投資判断を可能にしてきた。
サムスン電子やSKハイニックスが半導体メモリー分野で収めた成功も、こうした財閥型経営の賜物といえる。メモリー産業は巨額の設備投資を必要とするうえに、需給の逼迫によって利益が生じるまでのタイムラグが大きく、投資が報われるかどうかについての不確実性がきわめて高い。
足元のリスクは「メモリーの一本足打法」
上位2グループがメモリーに投資を集中させた結果、現在の韓国経済はコントロールの難しい「メモリー需要」という外部要因に大きく左右される構造となっている。
実際に韓国政府の税収とサムスン電子およびSKハイニックスの法人税納付額の推移を比較すると、いわゆる「シリコンサイクル(半導体市況の波)」と連動する形で、国の税収全体が大きく左右されていることが浮き彫りになる。
韓国取引所上場企業の時価総額は2026年の9月4日の終値で5976兆ウォン(KOSPI、KOSDAQ、KONEXの合計、1ウォン0.1円換算で597兆円)。そのうち、サムスン電子の時価総額が約1493兆ウォン(普通株、同149兆円)、SKハイニックスの時価総額が約1203兆ウォン(同120兆円)を占める。
そのため、韓国の株価指標全体や国民年金などの運用実績が、メモリー市況の良し悪しに直結するいびつな構造を生んでいる。
需給の波による価格変動リスクだけでなく、技術的・地政学的な競争も激化している。汎用メモリー分野では、長江存儲科技(YMTC)や長鑫存儲技術(CXMT)といった中国勢の猛追が著しい。この先、韓国の「一本足打法」ともいえる経済構造にとって、最大のリスク要因となるだろう。
一方、韓国の財閥は歴史的に、資金調達や税制優遇などの面で政治の庇護を受けて成長し、国の急速な近代化と発展に貢献してきた。そのため特権階級として映る財閥への、国民の反発は根強い。仮に総帥が経営判断を誤れば、グループ全体はおろか韓国経済そのものに深刻な打撃を与えるリスクも内包している。近年は循環出資の制限など、政府による財閥への監視・規制が厳しくなっている。
強固な支配構造で成長してきた韓国財閥、それに連動する韓国経済。メモリー企業があまりに大きくなってしまった今では、グループ内の多角的な事業が収益を補い合う伝統的な構図も機能しづらくなっている。半導体市況の波や新興勢力の台頭により、大きな岐路に立たされている。



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