この実験に参加した被験者のうち6割は、「普通の地下鉄で、特別なことは何も起きませんでした」と答えました。これは当たり前で、VRはそのようにつくられていたのです。
それにもかかわらず2割の人は、「私に微笑みかけてくれた人がいました」など、ポジティブな体験を報告しました。もちろん、そんなことはVR内ではいっさい起きていません。彼ら/彼女たちは世界を「バラ色の眼鏡」を通して見ているのです。
「灰色の眼鏡」を通して見えるネガティブな世界
それに対して残りの2割は、「男が私を睨みつけました」など、ネガティブな体験を報告しました。もちろん、これもまったく起きていません。こちらは世界を「灰色の眼鏡」を通して見ているのです。
この実験の結果をまとめると、現実を正しく受け止めているのは6割だけで、2割は世界を好意的に、残る2割は世界を敵対的に解釈しています。
フリーマンは、コロナ禍で反ワクチンの陰謀論にハマったのは、まさにこの「灰色の眼鏡」をかけた人たちだといいます。彼ら/彼女たちは社会や他人に対する信頼度がもともと低く、政府やメディア、専門家の言うことを信用しません。
「灰色の眼鏡」をかけた警戒心の強い人たちは、狩猟採集時代の陰謀世界ではうまく生き残ることができたはずです。しかし人類史上、とてつもなく豊かで平和な現代社会では、それが逆効果になってしまいます。
一方、かつては真っ先に陰謀の犠牲になっていたはずの「バラ色の眼鏡」をかけた人たちは、現代では「いつもポジティブ」「付き合うと楽しい」などと評価され、幸せな人生を送っているのです。



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