例えば、通常の学級での学びに苦戦している子がいた場合、毎週校内で行われる教育相談会議に報告が上がります。さまざまな実態を把握したうえで、学校内のどの場所であればその子に合った教育ができるのかを検討していきます。
多くの支援が必要な場合は特別支援学級、一部分の支援で教室適応が可能な場合は通級指導室(以下、通級)、学ぶための基盤をつくる段階ではその他の支援室(保健室、相談室、学年支援室等)――といったように、障害の有無にかかわらず、場所・人・物(教材)を生徒1人ひとりの教育ニーズにマッチングさせ、安心して学ぶことができる最善の環境を整えるのです。
最も画期的だったのは、特別支援学級や通級といった既存のリソースにとどまらない、「その他の支援室」も含めた柔軟な支援です。全職員で、校内のさまざまな場所で支援する体制だからこそ「みんなが資源、みんなで支援」になったのです。これまでの学校文化ではなかなか生まれない発想でした。
研究後も受け継がれた支援体制
この体制の下、同校では校長先生の柔軟な学校経営の中で、外国からの転入生へのさまざまな支援も、特別支援教室で積極的に行われていました。
次期学習指導要領の大きな柱の「多様性の包摂」の中では、障害の有無だけでなく、不登校、外国につながりのある子ども、特定分野に特異な才能のある子どもなど、多様な子どもが共に学ぶことを前提とした教育が検討されています。同校の歴代の校長先生方は『すべての子どもに最適な学びを保障する』という理念の下、すでにこれらを実行していたのです。
文科省の研究がスタートした時、生徒たちは通常の学級の朝の会にそれまで特別支援学級に在籍していた生徒がいることを不思議に思い「先生、どうして○○さんがいるの?」と担任に聞いていました。しかし、3年間の研究が終わる時に生徒たちは「先生、どうして今日は◯◯さんがいないの?」という意識に変わっていました。全生徒が一緒にいることで、たくさんの気付きや学びを共有し、共に成長していったと感じます。
研究は終わり、再び在籍学級は分かれる形に戻りましたが、連携して支える特別支援教育の体制はその後も受け継がれています。また、通級創設以来、通級で学んだ生徒たち132名の卒業生は、学びを諦めることなく、全員高校に進学することができました。学校全体ですべての生徒を支えるリアルな「多様性の包摂」の実践が、すでに19年前から取り組まれていたのです。


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