生ゴミこそないものの、母が主に過ごしていた部屋は、モノで雑然としていた。床が見えるのはいつも座っていた回転椅子のまわりだけで、その周りには、本、CD、書類、レジ袋などが、腰より低い位置に置かれている。
「ここにいると全然眠れなかったんです。モノが多くて、1人が怖かったんです」(母)
モノの圧迫感に苦しめられていたというのに、なぜ片付けることができず、これほどまで増えてしまったのか。
「交通事故で右手が動かなくなってしまって。(車の運転中に)信号で止まっていたら、後ろからノーブレーキで追突されて。それもカーブの坂道で雨の日に前の車と挟み撃ちになって。前と後ろでドンドンとやられて、首を痛めて、どこの病院に行っても原因がわからなくて」(母)
ようやく原因がわかったのは事故から4年後のことだった。それまで動かすことができなかった右腕の筋肉は大きく衰えてしまった。
「右手が上がらないから、モノを床へ下ろしたら今度は持ち上げられないんですよ。だから全部床に置くので、余計に広がってしまったんです。私、あまり2階に上がったことないんですよ。手すりもないし、怖いから」(母)
眠れない1階と、上がれない2階。大きな家の中で、母が生活できる範囲は、少しずつ狭まっていた。
親が生前整理を始める「ベストなタイミング」
モノが増えていった理由は、身体の問題だけではなかった。この地域はゴミ出しの環境が厳しいのだ。市の中心部なら戸建ての前まで収集車が回ってくれるが、ここではゴミを集積所である公民館まで運ばなければならない。二見氏が実際にゴミ袋を持って歩いてみると、集積所までは坂道で200mほどあった。


※ログイン後、コメント入力が可能です。