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ライフ #開業医がこっそり教える医療のリアル

「今日はどんな患者が来るか…」外来が好きだったベテラン医師が毎朝蒼ざめ不安に震えた、「開業」という名の"起業"の孤独

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小児科 開業医
目の前のお医者さんは、実は毎日ハラハラドキドキしているのかもしれません(写真:kouta/PIXTA)
  • 松永 正訓 医師・ノンフィクション作家
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還暦を過ぎて、さすがに経済的な心配はかなり減った。老後2000万円はクリアしたし、住宅ローンも借金も全部返した。なので、患者が少ない日は、患者家族と世間話を楽しめるようになってきた。もう以前のようにはあまり不安にならない。

先日、受診した小学校高学年の男の子は発熱が3日続く風邪の子だった。こうしたときは、いろんな薬を山ほど飲むより自宅での安静が大事。

「ゆっくりして、よく休んで。本でも読んで」

「もう読む本、なくなっちゃった!」

「じゃあ、人生について考えて(笑)」

「はい」

後日、熱が下がったその男児からクリニックに手紙が届いた。

「人生について考えたら一瞬で終わってしまいました」

ウケる。

ドキドキが減ったのは、経済的な理由のほかにも、さすがにベテランの域に入って開業医として自信をつけたからかもしれない。あるいは、歳をとって感覚が鈍麻したから?

起業するなら、「理想」と「夢」を掲げるべし

今から過去を振り返ってみると、開業医の使命とか、社会の中における価値とかについて十分に考えずにぼくは開業してしまったので、自分に自信がなかったのだろう。だから毎朝ドキドキしていたのだろう。消去法で開業医になるという弱い動機では、患者さんにとっていい医療ができないかも。

ぼくの友人には「金持ちになりたい」という理由で開業医になったヤツがいる。患者にたくさん来てもらいたいので、とても丁寧に患者に対応する。それはそれで、お互いにいい関係だろう。

また、「地域医療に貢献したい」という高い志で開業した友人もいる。診療時間がけっこう長く、遅い時間までクリニックを開けている。泥臭く地道にやっているという感じだ。これも患者にとっていい医療だろう。

ぼくも60歳になってようやく自分の理念を明確化することにした。医師の倫理規定を定めた「ジュネーブ宣言」の全文を印刷して診察室に貼り出したのだ。ちょっと遅いよね。

起業するというのは、ハラハラドキドキである。みなさんも、もし起業するなら、ぼくみたいにならないように、「理想」と「夢」を最初にしっかり掲げてくださいね。

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