この歴史を追いかけることは、この概念が伝統的に背負ってきた「悪いもの」を指す用法が、いかに現代でも命脈を保っているのかを理解することにつながるでしょう。
性的消費の起源を辿る
性的消費の歴史を辿るうえでまず留意しておかないといけないのは、コト消費などと比較しても、この言葉を成り立たせている二つの構成要素の組み合わせそれ自体はありふれている、ということです。
「性的」という言葉は、周知の通り様々な他の言葉と結びつきます。実際、数こそ多くないとはいえ、性的消費という言葉は近代日本においてぽつぽつと利用されてきました。
そしてその中には、1936年のあるルポルタージュのように、「可憐な肉体の商品を、和洋いろとりどり絢爛な衣裳に包んで、これらの客たちの性的消費を待っている百人近いダンサーたち3」といった、現代的な用法に近いように思える表現がなされていることもあります。
もちろん、このような用法が過去に見られるからと言って、筆者は現代における性的消費という言葉の広がりが、過去からの明確な系譜を持つと主張したいわけではありません。こうした用法が散発的に見られることは、性的消費という言葉が今後論じるようにネガティブな意味を持つものとして概念化されがちであったことを示唆してはいます。
とはいえ、現代日本におけるその広がりが、こうした過去の蓄積によるものと見なすことは困難でしょう。それは、この言葉がここ10年ほどで爆発的に普及した理由にはならないからです。
では、いつ頃から性的消費は使用されるようになったのでしょうか。
いくつかのデータベースを参照すると、2010年代頃よりインターネット上では、この言葉を用いた発言が度々行われていたことがわかります。それを端的に言えば、「自らが望まない形で、他者がある特定の対象を性的に欲望すること・表象すること」に対する論難であり、その中で性的消費、あるいは性的に消費するといった言葉遣いが登場します。


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