「このあとは、鬼怒川温泉行って、宿に向かおうか」
「鬼怒川温泉、懐かしいなあ。20年くらい前、おじいちゃん、おばあちゃんを連れていったんよね」
私は鬼怒川温泉にはまだ行ったことがなかったのですが、妹は義弟とまだ小さい娘、そして祖父母と観光して1泊したそうです。祖父は死ぬまでに一度は日光東照宮を訪れてみたかったらしく、栃木旅行を大変喜んだと聞いたことがあります。
山口県萩市在住の祖父母にとって栃木は遠く、人生初の訪問でした。今はもう2人とも鬼籍に入っていますが、妹夫婦のおかげで祖父母にいい思い出作りができたことに、私も感謝しています。
車を走らせ、鬼怒川温泉に向かいました。さすが大規模温泉地の鬼怒川、遠くから見てもホテルや旅館の存在感が圧倒的です。
「おじいちゃん、おばあちゃんと泊まったホテルって覚えてる?」
車を降り散策しながら私が尋ねると、妹は首を振りました。「名前は覚えてない。でも川沿いで、エントランスの天井が高くて……」。宿の写真は撮ってないんよね、と残念そうに言いました。
意図せず作られた遺跡のよう
鬼怒川で圧巻だったのは、今や廃墟となってしまったホテル、旅館群です。なぜか川を挟んだ片側に集中しており、人の気配を失って色褪せた大きな建物が立ち並ぶ様は、意図せず作られた遺跡のようにも見えます。私たちは息を呑みながら、目の前を歩きました。


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