つまり、これらの作品は、テレビがDVDになったり、配信に変わったりといった違いはありつつも、総じていえば「メディアを操る戦略が功を奏した」作品たちなのだ。
ところが、「ちいかわ」のヒットは過去の成功の方程式には当てはまらない。フジテレビでの放送は「ちいかわ」を知らない人と作品との出会いに貢献し、とくに子どもたちへの認知には大いに貢献しただろう。だがどうも、これまでのアニメのような「テレビが作品の人気を確固たるものにした」という感触がないのだ。
ただあるのは、X上で「ちいかわ」にハマっていた人と、知らなかった人がいたという事実。そして、ハマっていた人は、私のような鈍い層が気づかなかっただけで、驚くほど多かった。
「X直送型」の爆発的ヒット
「セイレーン編」の最後のほうのエピソードは、X上で数千万ものインプレッションを獲得していた。ハマっていた人たちの間では、今と同じようにドストエフスキーを持ち出した議論が展開されていたらしい。私のような鈍感層が気づかなかっただけだ。
つまり、『映画ちいかわ』の爆発的ヒットは「X直送型」とでも呼ぶべき、いままで経験したことのなかったパターンと言ってよさそうである。
「ちいかわ」は人気タレントや芸人が特別ゲスト的な声優として出演していない。舞台あいさつもない。知らない人にアピールするための施策は一切なしだ。
ただ、ファン垂涎の特典はすでに3回配布している。9月からは応援上映も決定している。徹底して、ファンに向いている。
好きな人がとことん映画を楽しむためのサービスしかやらない。そんな作品ファースト、ファン一途な姿勢が、ますますファンたちの心をつかむ。ファンでないなら来なくてもいい、と突き放しているようでもある。その姿勢が、結果的にファン以外の興味をそそる。
X直送型とは「ちいかわ」でしか成立しないのかもしれない。それほどまでに特殊なコンテンツだ。ただ実は、アメリカで盛り上がりつつある新しい動きと似ていることにも気づく。


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