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興収110億円突破『映画ちいかわ』が引き起こす"宣伝不要"映画界の地殻変動、新たな成功の方程式「X直送型」って何だ?

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ちいかわポスター
7月24日の公開から快走が続いている『映画ちいかわ』。勢いはどこまで続く?(写真:編集部撮影)
  • 境 治 メディアコンサルタント
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日本でも7月に公開された『オブセッション 災愛』は、カリー・バーカーという20代の監督が撮った。なんと、世界興収が5億ドル。彼はYouTubeチャンネル「That’s a Bad Idea」でコツコツ作品を公開し、百万単位の再生数を獲得した。登録者数は165万人にも及ぶ。ただ、日本では一部の映画好きの間では話題になったものの、目立ったヒットにはなっていない。

9月公開の『バックルームズ』もケイン・パーソンズ監督が20歳のときに作った作品で、世界興収は3.9億ドル。彼もYouTubeで作品を公開しており、登録者数は360万人に上る。つまり、いまのアメリカでは「YouTube直送型」の映画がヒットし始めているのだ。

だが、日本では海外ほどヒットしない。英語のチャンネルなので、日本にファンが少ないからだ。同様に、『映画ちいかわ』が海外で公開されても、ヒットは難しいかもしれない。Xでの国内人気が言語の壁を越えるのは至難の業だ。

メガヒットのカギは「ファンダムの存在」

劇場近くのクレーンゲームで景品をゲット。こうした仕掛けもファンダムの形成につながっているのかもしれない(写真:編集部撮影)

ただ、Xであれ、YouTubeであれ、「ネット直送型」のヒットが生まれる時代になったと言えるのではないか。ポイントは、ファンダム(熱狂的なファン)だ。熱いファンがいれば、映画市場にデビューして、いきなりメガヒットが飛ばせる。そんな時代が来ているのだ。

映画のヒットとは長らく、資本と時間をかけてIP(知的財産)を育て、宣伝によって動員を作り出す、装置産業的な営みだった。「トイ・ストーリー」は、その王道が生んだ、最も輝かしい成果の1つである。

日本公開の1996年、子どもが生まれたばかりの私は、1人で映画館で見ながら、いつか子どもたちと見に来ようと思ったものだ。実際、ピクサーのほかの作品や『トイ・ストーリー』の2作目、3作目は家族で見にいった。私の子どもたちもすっかり大人になった今年、シリーズ5作目が公開され、いまの親子連れを楽しませているのは感慨深い。

だが、世界のディズニーがピクサーと30年育てたコンテンツが、X生まれのシンプルな線のアニメに抜かれるとしたら、時代の変化を思い知らされずにいられない。映画と観客の関係に、電波や撮影所が不要になろうとしている。

映画市場の主導権が、どこへ移ろうとしているのか。この夏の興行は、その問いを私たちに突きつけている。ネットで育ったファンダムが、映画のヒットの作られ方を確かに変えつつある。

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