「屋上に遊園地があって、子どもの頃はよく連れて行ってもらった」と、齋藤さんは懐かしそうに語ってくれた。天秤棒一本で福島に渡った行商人の店は、その後90年近くにわたり、街の顔であり続けることになる。
③郡山と仙台の存在
ここで、百貨店が閉店した理由を見ていきたい。モータリゼーションや郊外モールの進出といった全国共通の要因はもちろんのこと、福島の場合には近隣都市の存在も大きい。
福島市に近い郡山市は「経済県都」を公式に自称している。福島県が公表する「令和3年経済センサス」を見ると、卸売業と小売業を合わせた年間商品販売額は、福島市の約7852億円に対し、郡山市は約1兆4014億円で、約1.8倍。特に卸売業では約2.1倍の差がついている。県庁所在地は福島市だが、経済の中心地は郡山市なのだ。
さらに、福島市民の買い物先としてよく挙げられるのが仙台だ。業界誌「とうほく財界」でも、中合の店長が「この程度の商品しかないなら東京や仙台に行く」と客から言われたエピソードを紹介している。仙台の百貨店が海外の高級ブランドを扱う一方、福島にはそうした店がなかった。


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