なぜ、病院に所属しているはずの医師たちが、これほどまでにPEの言いなりになってしまうのか。その背景には、アメリカ医療界独自の「医師派遣会社」のロールアップ(買い集め)戦略がある。
アメリカの多くの総合病院は、救急科や麻酔科、放射線科といった専門部門の医師確保を、「エンビジョン」や「チームヘルス」といった外部の医師派遣会社にほぼ丸投げして委託している。
PEファームはこの点に目をつけ、全米の独立した派遣会社を次々と買収・統合し、市場を寡占化した。
市場を支配したPEは、法律を潜り抜ける「ペーパーカンパニー」の仕組みを構築した。
アメリカの多くの州には「企業による医療行為の禁止(企業医療行為禁止法)」があり、本来は非医師の投資会社が病院や診療所を直接支配することは禁止されている。
だが、PEは「名目上の代表医師」を立てることでこの法律を骨抜きにし、実際には裏でPEファームがすべての財務や診療報酬、さらには「治療プロトコル(標準治療ガイドライン)」までを完璧に支配するシステムを完成させた。
「患者と投資家の両方には仕えられない」現役医師たちの悲痛な叫び
この支配のもとで、医師たちはもはや専門家としての「独立性」を失い、単なるPEの「集金ロボット」にされている。
エンビジョンなどの会社は、医師がより高い点数の診療報酬を請求できるよう、患者の病状を不当に重く記録させる「アップコーディング(不正な高額請求)」のプレッシャーを組織的にかけていた。
「私たちは二君に仕えることはできません。患者と投資家の両方に、同時に忠誠を誓うことは不可能なのです」——ある現役医師がブルームバーグに語ったこの言葉は、現代の医療ビジネスが抱える本質的な矛盾を突いている。
さらに、ブラックストーン傘下のチームヘルスは、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック初期、最も現場が過酷を極めた時期に、時給制だった救急医たちの勤務時間を削減し、事実上の給与カットを強行した。
その一方で、自らの医療体制の不備(感染対策の不十分さ)を告発したミン・リン医師を即座に解雇するなど、徹底的な口封じを行っている。


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