次の課題は、販売拠点をどうするかだった。新たな売り場を探していたところ、静岡駅の駅ビル「パルシェ」にあるパン売り場が、改装を控えているという情報を店長から聞いた。
もともと、バンデロールが運営する焼き立てパン店の商品を運んで、販売していた場所だ。静岡市は沼津と同じく、昔からのっぽパンが親しまれている地域だ。場所もタイミングも申し分なかった。
パン生地の原料は発売当時と同じで、定番のクリームも、同じものを使った。新しく加えたのは、焼き立てパン店のような“選ぶ楽しみ”だ。実は、かつてののっぽパンは、1日に3種類の味しか作っていなかった。それを毎月入れ替えていたため、商品棚に並ぶのは一度に最大3種類までだった。
しかし復活にあたっては、味を9種類に増やし、焼き立てパン店のように店内で仕上げるスタイルを導入した。工場で焼いたパンを店舗に運び、その場でクリームを絞って袋詰めにすることで、在庫を抱えずに多くの種類を販売することができる。
そうして、生産中止から9カ月後の2008年4月、静岡駅パルシェにのっぽパン専門店がオープンした。
1000本が1時間で完売、それでも5年で店は閉じた
オープン当日は開店前から行列ができ、現場は大混乱だったという。1000本準備したのっぽパンは1時間で完売した。すぐに増産はできなかったが、それでも数日後には2000本以上を販売できる体制を整えた。数カ月にわたって行列は途切れず、列を整理する人員まで置くほどの盛況が続いたという。
同年9月には、バンデロールのお膝元である沼津駅に2号店をオープンした。こちらも初日に5000本を販売するなど、復活したのっぽパンは大きな注目を集めた。
ところが、復活の熱は長くは続かなかった。徐々に行列は見られなくなり、1日の販売本数は数百本程度に落ち込んだ。復活から5年後の2013年、2つの専門店は閉店することになる。
だが今なお、のっぽパンは多くの人に愛されている。復活後、どのように販売を続けていったのだろうか。後編へ続く。


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