グローバル展開する各社も同じ課題に直面する。Duolingoはコース設計時に地域ごとの語彙選定を行い、Googleも画像認識における文化的バイアスの是正に取り組んできた。Enumaが「組織の感度を上げる以外に方法はない」と語るのは、対象が就学前の子どもであり、イラストや表情といった非言語的な要素が学習の中心を占めるという教材の性質によるところが大きいだろう。
AI時代に教えるべきは「人間になること」
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次世代に教えるべきは「社会やコミュニティに貢献できる、自立したよき人間になること」(写真:Enuma提供)
話は、AIが教育そのものをどう変えるかに及んだ。
スイン氏は、産業化の時代の教育を「脳をいかに鍛えるか」が中心だったと振り返る。すべての子どもの脳に、できるだけ高性能なCPUやメモリ、処理速度を備えさせようとしてきた、という見立てである。
だがAIの時代になり、脳は以前ほど重要ではないのかもしれないと言われ始めた。これからの中心は、心であり、人との関係性であり、つまり「人間になること」だと彼女は強く信じている。
次世代に教えるべきは、社会やコミュニティに貢献できる、自立したよき人間になること。それはAIには教えられない。だからこそ、AIがテスト対策的な学びから子どもを解放し、他者への思いやりや社会への関心へと目を向けさせてほしいというのが彼女の願いだ。
実際、韓国向けのアプリでは、英語をコミュニケーションと情報処理の媒体として使わせ、部屋の片付けや公共のマナー、セルフケアを教える社会情緒的学習のカリキュラムも作り始めているという。
企業の教育向けAI戦略と比べると、この方向性の独自性が見えてくる。Googleは「Gemini for Education」を教育機関向けに展開し、教員の教材作成支援や生徒の学習補助を主眼に置いている。Microsoftも「Microsoft 365 Copilot」を教育機関向けに提供し、レポート作成や情報整理の効率化を訴求してきた。いずれも、学習と業務の生産性を上げる方向に力点がある。
これに対しEnumaが向かうのは、効率化ではなく非認知能力の領域だ。どちらが正しいという話ではないが、AIによる効率化が進むほど「AIに任せられない部分」の価値が上がるという読みは、企業の人材育成にも通じる論点だろう。


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