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①安全管理体制等の不備については、前述したとおり危機管理マニュアルの不備などを含めて多くの問題が指摘されているが、私が注目したのは次の箇所だ。
2025年度辺野古ボートコースにおいては、当日、波浪警報等の気象警報が発出された場合は乗船を中止することは、ほとんどの引率者において認識されていたものの、注意報のみが発出された場合に乗船を中止するか否かについて、そのルールは定められておらず、引率者により意識もされていなかった。
そのため、2025 年度辺野古ボートコースが実施された2026 年3 月16 日には、沖縄県名護市において波浪注意報が発令されていたものの、a16 教諭及びa8 教諭は、それぞれ気象警報が発令されていないことを確認したのみで、他の教員も含めて注意報発令の有無までは確認しておらず、確認した結果についても教員間では共有されなかった。そして、c1 氏が出航可能であると判断したことを鵜呑みにして、2025年度辺野古ボートコースの実施が決定された。(中略)
a8 教諭及びa11 教諭は、救命胴衣の着用方法についてc1 氏をはじめとする船長らに一任し、自ら救命胴衣の着用等について指導を行わなかった。(報告書p.144)
気象警報が出ていないので、引率していた教員は「大丈夫だろう」と判断した。警報が出ていない段階でも、天候の急変や海のコンディションなどによっては危険があることを十分に知らなかった可能性が高いのではないか。④安全管理に関する意識の欠如にも関連する問題である。
②リスク管理体制等の機能不全については、前述のように、高校ならびに学校法人双方において安全性を確認、監督する機関、会議が機能していなかったことなどが述べられている。つまり、チェック機能がなかった問題だ。
③安全管理に関する検証を妨げた組織風土については、「安全管理について自分事として検証せず他人任せとする組織風土」と厳しく指摘している。
辺野古ボートコースの導入以降、本件事故が発生するまで、担任会、研修旅行委員会(教員)及び教職員会議のいずれの会議体においても、辺野古ボートコースの安全性に関する問題提起や質疑がなされた形跡はなく、事実上、学年主任が作成した原案を追認するだけの運用となっていた。
この点に関し、「学年主任主体で進んでいく。主任の負担が大きすぎるだけでなく、いろんな視点が入りにくく、チェック機能が働きにくいと感じた。」、「自らは事前の計画段階に関与しておらず、研修旅行直前に初めて自身の役割を知らされるため、意見を述べる立場にはなかった。」と述べる教員がいた。また、辺野古ボートコースが初めて提案された2022 年度沖縄研修旅行に係る担任会に出席した教員の中には、「下見に行った教員は旅程表について意見を出すことはできても、下見に行っていない教員は意見を述べる材料を持ち合わせていなかったため、意見を述べることはなかった。」と述べる者もいた。
研修旅行委員会(教員)及び教職員会議においては、担任会任せとなっており、担任会においては、学年主任をはじめとする下見に行った教員任せとなっていて、いわば、他人任せの連鎖が形成される組織風土となっていた。
以上が報告書で述べられた事故の背景・要因の概略である。ほかの学校(私立、公立等問わず)でも「似た問題はない」と言いきれるだろうか。担当学年に任せきりで、例年通りの場合、安全性などについて特段つっこんだ議論はしない、といったことは、おそらく他の学校でもあることではないだろうか。
改めて、今回の事故から得られた教訓、同校ならびに他校においても対策を講じなければならない課題について考察しておきたい。ここでは3点に整理する。
(1)大丈夫だろうとの正常性バイアスと教育的意義を強調する教育観の罠
人は滅多に起きないことに対しては鈍感になりやすい。災害時や事故のときでも「まだ大丈夫」「今回も問題ない」などと思い込み、自身にとって都合の悪い情報を無視したり過小評価したりすることが多数報告されている。これは「正常性バイアス」と呼ばれている認知特性だ。
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