英右派ポピュリスト政党「リフォームUK」のファラージ党首は、自らの辞職に伴い実施された英南部クラクトン選挙区の補欠選挙で勝利を収めた。しかし金銭疑惑への批判を封じ込める戦略は、ごみ箱に扮したコメディアン「ビンフェイス伯爵」が4分の1を超える票を獲得したことで裏目に出た。
ファラージ氏は英南部の海辺のリゾート地クラクトンで行われた開票に姿を見せなかった。極めて異例の対応で、同氏は選挙結果の発表を妨害する動きがあるとして、警察から欠席するよう助言されたと説明した。同日予定していた勝利演説も中止した。
今回の補選はファラージ氏が先月議員を辞職したことで実施された。自身の金銭問題を巡る疑惑で信用を失墜させようとする既存勢力との闘いだと訴えて、有権者に改めて信を問う狙いがあった。
選挙には勝利したものの、同氏が直面する政治的リスクも浮き彫りになった。支援者からの未申告の寄付金を巡る議会の調査が再開され、再選によって危機を収束させるという目論見は空振りに終わった。
リフォームUKの勢いに鈍化の兆し
主要政党が今回の選挙を「自己正当化のためのパフォーマンス」と批判して擁立を見送った結果、コメディアンのジョナサン・ハーベイ氏が演じるビンフェイス伯爵がファラージ氏の最大の対立候補となった。
ファラージ氏の得票率は62.8%だったのに対し、ソフトクリームの価格上限設定や、公共交通機関でスピーカーフォンを使用した人の徴兵などを公約に掲げたビンフェイス伯爵は26.7%を獲得した。投票率は44%だった。
ファラージ氏の当選は当初から確実視されていたが、得票率はサーベーションが先月実施した世論調査の予測を下回った。調査ではファラージ氏が73%、ビンフェイス伯爵が20%を得票すると予測していた。
リフォームUKは世論調査で長期にわたり首位を維持していたが、足元では人気に陰りが見える。背景の一つには、ファラージ氏の資金を巡る疑惑がある。暗号資産(仮想通貨)への投資で財を成した富豪から受け取った500万ポンド(675万ドル)の贈与に申告義務があったかどうかについて、同氏は議会の調査を受けている。
ロンドン大学バークベック校の政治学講師ローラ・リチャーズグレー氏は、主要政党が候補を擁立しなかったことで、補選を「国民対既成勢力」の構図に持ち込もうとしたファラージ氏の目論見が外れたと指摘した。「ファラージ氏が主導権を失ったため、特に全国レベルで裏目に出た」と述べた。
与党・労働党の支持率上昇も、ファラージ氏の立場を弱めている。先月のバーナム首相就任以降、労働党の支持率は上向き、リフォームUKを28%対25%でリードしている。
暗号資産投資家からの寄付金
開票結果の発表直後、同氏の資産申告を巡る議会の調査が再開された。調査は補選出馬に伴う議員辞職により一時停止されていた。
調査の焦点は、タイを拠点とする富豪から2024年の総選挙前に受け取った寄付金を、当選後の期限内に申告すべきだったかどうかだ。議会規則では、議員は選挙前1年間に受け取った寄付金について、就任後1カ月以内に申告しなければならない。
ファラージ氏は資金を受領し申告しなかったことは認めているものの、不正は行っていないと主張している。
議会当局が申告規則違反と判断した場合、ファラージ氏は議員資格の停止処分を受け、議席維持のために再び選挙に臨む可能性がある。その場合、主要政党も候補を擁立する公算が大きい。

