行政書士試験合格後は、政治部の活動で政治家から話を聞く一方、学外ではいじめ・不登校問題に取り組む団体を設立し、水戸市議会への陳情や当事者交流会を行った。こうした経験を生かし、総合型選抜のFIT入試で慶應義塾大学法学部に合格した。
悉知さんは、大学入試の多様化によって、学力試験だけでは測れない力を評価してもらう機会が広がったとみる。
「不登校という、周囲とは異なる時間を過ごしたからこそ語れることがあります。それを将来のビジョンや大学で学びたいことにつなげることが大切です。志望理由書は『大学へのラブレター』と考え、自分の関心を深めてきた過程と、入学後に何を学びたいかを熱意を持って示すことがポイントです」
ただし、通信制高校は上級生や卒業生とのつながりが弱く、受験情報を得にくい。悉知さん自身、総合型選抜専門塾を利用し、得られる情報の差を実感したという。
また、通信制高校出身者は面接で「大学に毎日通えるのか」と問われることもある。悉知さんは「本来、大学側はそうした心ない言葉をかけるべきではない」としながらも、「これまでに自分の好きなことに取り組み、努力を継続した具体的なプロセスを示せば、困難に向き合う力があることを伝えられる」とアドバイスする。
「新たな不登校支援」で懸念すること
文部科学省の有識者会議は26年6月、不登校の児童生徒に個別の教育課程を編成し、「個別の指導計画」に沿って学びを支援する新制度の取りまとめ案を示した。下学年の学び直しなどの成果も柔軟に評価する方針だ。
「中学時代を振り返ると、授業に出席できていないとはいえ、学習成果が評価すらされないことには心理的なつらさがありました。下学年の内容であっても、本人が学んだ成果を評価してもらえる制度はよいと思います」
一方で、教員の多忙さから制度が形式的なものになることや、学校や保護者が「制度があるのだから勉強しなさい」と圧力をかけることを懸念する。
「不登校の子どもは心身の回復が最優先です。制度が新たなプレッシャーになったり、教員の負担増によって不登校の子どもへの理解を妨げたりしてはいけません。活用するかどうかは、本人の回復状況や意思を中心に判断すべきです」


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