確かに、同族企業でも小規模な会社であれば、意思決定のスピードが早いとか、臨機応変な対応ができるとかといったメリットは大きい。しかし、業務拡大に伴って人員が増えれば、さまざまな軋轢が生じる。
例えば、公私混同とガバナンスの不在。株主と社長が同一人物の場合、社長の暴走をストップさせる機能が働きにくい。社長自身が「会社のリソースは自分のもの」という意識を持ちやすく、気分や私情で組織のルールを簡単に変えるケースもある。 そのため、意見を言いにくい雰囲気になっており、社長のまわりはイエスマンばかりという構造に陥りやすい。
さらに同族企業の多くでは、優秀な人材がどれだけ成果を出しても、トップの座に親族以外は座ることは難しい。筆者は、大手の同族企業で血縁ではない人物を社長にしたケースを知っているが、社長になるまでの道のりはかなり険しかったと聞いた。
加えて、同じ部署に次期社長候補ともいえるご子息、ご令嬢がいたら、気を遣わなければならない。それも疲弊の要因になる。
それでも会社を辞めないワケ
もちろん、働きやすい環境を作ろうと改革に取り組む企業は増えている。しかし、同族企業の根本的な問題にまで意識が向いている会社はまだ多くはない。
筆者のもとにも、ワンマン社長のもとで働いて疲弊し、離職を考える社員からの相談がしばしば寄せられる。どんなに彼らをケアしても、 社長に自覚がない限り、何も変わらない。なかには、部下のメンタルヘルス不調や離職の責任を、「君のせいだ」と社長から責められた管理職の相談もある。
Mさんもそのような状況のなか、部下たちを必死に守っていた。しかし、これまでに部下10人ほどが会社を去り、そのたびにやりきれない思いにさいなまれてきた。
それでもMさんが会社を辞めないのは、仕事がおもしろいからだ。


※ログイン後、コメント入力が可能です。