今回の実験では、体重1キロあたり1.3グラムのエタノールを、日本酒で1時間かけて摂取した。体重70キロなら4合瓶で1本強にあたる。「酒に強い」とされる人でも、多くがはっきりと二日酔いの症状を感じられる飲酒量だ。チェイサーとして飲んだ水も、日常の酒席で飲む量としてはかなり多いだろう。
それでも二日酔いの症状に差が見られなかったという結果は、長年信じられてきた「チェイサー神話」に再考を迫るものといっていいだろう。
それでも水は無意味ではない
しかし、「翌朝が楽だった」「酔いが回りにくかった」といった“チェイサー効果”は多くの人が実感している。これらはどこから来ているのだろうか。
今井教授は、水を飲むことで満腹感が生まれ、結果的に飲酒量が減る可能性を挙げる。今回の実験でも、強い満腹感から途中で離脱した人がいたという。
「チェイサーがまったく無意味ということではなく、水を挟むことで飲酒量が減ったり、飲酒ペースが緩やかになったりする効果はあると思います。『水を飲んでいるから大丈夫』と自分の中で合理化して飲みすぎるのではなく、自分のためにも周囲のためにも適正な飲酒量を意識し、楽しんでいただきたいと思います」
冒頭のグループにこの論文の概要を伝えたところ、「マジですか!」と驚いたあと、「じゃあ、ちょっと実験してきます! 実験台は俺!!」と敬礼してネオンの先へと消えていった。古代から人類を悩ませてきた二日酔い。その「謎」はいつか明らかになるのだろうか。
(AERA編集部・川口穣)

