「造る時代」から「守る時代」へ。この社会の変化は、接着技術を強みとしてきたコニシにとって、新たな成長機会となる。
接着剤を売る会社から、「社会インフラを直す会社」へ
住宅や社会インフラが「造る時代」から「守る時代」へ移る中、コニシもまた、自らの役割を変えていった。
従来のコニシは、接着剤やシーリング材などの材料を製造・販売するメーカーだった。しかし、老朽化した橋梁やトンネルの補修では、材料を供給するだけでは十分ではない。現場の状況に応じて補修方法を提案し、施工まで含めて対応することが重要になっていた。
そこでコニシは、材料販売にとどまらず、施工まで手掛ける事業へと踏み出す。
中核を担ったのが、グループ会社のボンドエンジニアリングだ。橋梁やトンネル、鉄道、高速道路などを対象に補修・補強工事を展開し、接着技術と施工を組み合わせた事業へと領域を広げていった。
この戦略は、業績にも表れている。
16年3月期には、工事事業の売上高が100億円を突破。その後も工事事業は拡大を続け、成長を支える柱となった。
つまりコニシは、「接着剤を作る会社」から、「接着技術で社会インフラを維持する会社」へと進化したのだ。
そしてコニシの接着技術は今、建築や土木だけにとどまらない。電子機器や自動車など、より高い性能が求められる産業分野へも、その活躍の場を広げている。
かつて「折れた下駄を直せる」と評判になった木工用ボンドは、誰も気づかない場所で社会インフラを支える存在へと広がっていった。
「なぜ私たちは『ボンド』は知っていても、『コニシ』を知らないのか」――。
その答えは、ボンド木工用が会社の主役ではないからだ。
家庭用接着剤、建築用接着剤、土木資材、インフラ補修、電子・自動車分野。コニシは、時代ごとに社会が求める用途へと接着技術を応用し、事業の幅を広げながら成長してきた。現在もコニシの事業の中心は、一般消費者の目に触れないBtoB分野が担っている。
黄色いボトルに赤いキャップ。私たちがよく知る「ボンド木工用」は、コニシを代表する商品だ。しかし、この1本だけでは、会社の姿は見えてこない。
私たちが普段意識することのない場所、住宅や橋梁、トンネル、自動車、電子機器――。普段は見えないが、至るところに、コニシの接着技術は息づいている。


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