ぼくからは、19歳ならネコとしては十分に長生きしたといえること、慢性腎臓病は10歳以上のネコでは珍しくない病気であること、そして、飼い主さんはできる限りのことをしてあげてきていることをお伝えしました。
「最期は飼い主さんに見守られながら、その膝の上で亡くなったのです。きっと、十分に幸せだったはずです。だから、そんなに後悔しなくてもいいのではないでしょうか」
そう話をしたあと、「一晩考えて、明日また電話をください」と伝えて、その日の電話を終えました。時計を見ると、15時半。飼い主さんの話しぶりがあまりに深刻だったので、こちらも途中で時間を気にする余裕がありませんでしたが、気づけば3時間が経っていました。
翌朝の電話で「病理解剖は…」
翌朝の8時、再び飼い主さんから電話がかかってきました。
「ゆっくり話を聞いてもらい、一晩考える時間をもらったことで、気持ちが整理されました。病理解剖は、やっぱりいいです。お騒がせしました」
その電話でも、飼い主さんはまた、ネコとの思い出をいろいろと話してくれました。聞いているうちに、ぼくは「この先、また気持ちが揺れることもあるかもしれない」と感じたので、「できれば、遺体はきちんと火葬してあげてください」とお伝えしました。
理由の1つは、衛生面です。
ネコほどの大きさの動物でも、遺体をそのまま人間の居住区に埋めておくことは、衛生上好ましくありません。また、土に埋めた遺体が、カラスやタヌキなどの野生動物に掘り起こされることもあります。そんな遺体の一部を目にするようなことになれば、飼い主さんにとっては大きなショックでしょう。
もう1つは、飼い主さんが気持ちに区切りをつけるためです。
亡くなったペットの遺体が近くに埋まっていることで、その死を長く引きずってしまう飼い主さんを、ぼくはこれまでに何度か見てきました。ペットの死を受け入れていくためにも、遺体はきちんと火葬し、供養してあげたほうがいい。ぼくは、そう考えています。


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