この日の電話も、9時半頃まで続きました。そして数日後の年の瀬、飼い主さんから3度目の電話がありました。ネコをペット葬儀社で火葬し、その遺骨が自宅に戻ってきたそうです。
「ようやく踏ん切りがついて、あの子の死を受け入れることができました」
そう言って、感謝の気持ちを伝えてくださいました。
ペットを失った飼い主にグリーフケアを
獣医病理医の仕事は、亡くなった動物の体を調べて、その死の原因を明らかにすることです。しかし、病理解剖について相談にくる飼い主さんが、本当に求めているものが病理解剖そのものとは限りません。
「この子はなぜ死んだのでしょうか」と死因を尋ねながら、その奥では、「もっと早く病気に気づいてあげられていれば」「自分はこの子に十分なことをしてやれたのか」と、深く悩んでおられることもあります。そんなとき獣医病理医は、病理解剖に取りかかるよりも先に、飼い主さんの話をよく聞く必要があるでしょう。
大切な存在を失った悲しみや後悔に寄り添い、その人が喪失と向き合っていく過程を支えることを「グリーフケア」といいます。人間の場合には、死別の悲しみを抱える遺族を支える遺族会などの場がありますが、ペットを亡くした飼い主さんが自分の思いを十分に話せる場はまだ多くありません。
治療を担当した獣医師には話しにくいことでも、第三者である獣医病理医になら話せることもあります。ぼく自身、今回のような相談を受けるなかで、「獣医病理医だからこそできるグリーフケアもあるのではないか」と感じています。
ペットの死因を調べるだけでなく、残された飼い主さんがその死と向き合うことも支える。これから、獣医病理医としてそんな役割も担っていければと思っています。


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