一方で、野放しにしたわけではない。利用登録はAIリテラシーテストの合格者に限り、リスクの最終責任は利用者一人ひとりにあるという原則を徹底する。エージェントの作成と共有にはそれぞれ研修を課し、ルールを逸脱した利用者には是正を案内するシステムまで開発した。広げるほど統制が難しくなる市民開発を、入り口の教育と事後の検知で挟み込んでいる。
利用状況は、誰がどう使っているかの記録を一元的に集めて一覧できるようにし、部署や店舗ごとの利用率を確認して、活用が遅れた部署への働きかけに使う。AIの利用量が契約上の上限に近づく兆しも自動で検知し、社員が使えなくなる前に先回りして枠を広げる。使われないことを最大のリスクと定義したからこそ、監視の対象がシステムの障害から社員の行動に変わっている。
内製ツールを畳んで移行したSky
業務ソフト大手のSkyは、自前のツールで社員をAIに慣れさせてから、既製サービスに切り替えた。同社は2022年から生成AIツール「SkyAI」を内製し、Web検索や画像内の文字の読み取り、AIへの上手な指示文(プロンプト)が社内に流れてくる共有機能などを自前で作り込んできた。
中でも調査レポートを自動生成する内製のディープリサーチ機能は、経営層や管理職に広く使われたという。セッションに登壇したAI Innovation Labの須藤康正氏は、この内製ツールが社員のAIを使う準備状態を作ったと振り返った。
そのうえで同社は、機能追加にエンジニアの人員を割き続けることを避け、役割を終えたと判断して自社ツールを畳んだ。移行先に選んだのがGemini Enterpriseで、全社で一斉に切り替えた。
選定の決め手は社内データと組み合わせた検索精度で、内製ではデータの持たせ方の細かな調整に苦労してきた検索の性能を、導入直後に上回ってきたという。Google Workspace以外のオフィスソフトを使い続けたままGemini Enterpriseだけを導入できた柔軟さや、成果物の知的財産の保障が契約で明文化されていた点も評価した。


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