プラスチックのシートに空気を封入して作られる気泡緩衝材は、石油化学製品を代表する存在と言っていい。だが、なぜ川上産業は原油市場の変動リスクから一定の距離を置くことができているのだろうか。そのカギは、同社が築いてきた独自のリサイクル体制にある。
日本全体で見れば、プラスチックを取り巻く環境はいまだに発展途上と言える。環境省や業界団体のデータによれば、2023年時点で日本の廃プラスチックのうち、素材として再利用されるマテリアルリサイクルは2割強にとどまっている。残りの8割のうち6割強はエネルギー回収、すなわち廃棄物を燃焼して得られる熱として回収されているのだ。この「サーマルリサイクル」に依存する構造は「プラスチック資源の循環戦略」という理想とは大きなギャップがある。
そうした中で川上産業は自社製品について、2025年に再生原料使用比率を98%までに高めている。
マテリアルリサイクルが少ない割合の日本で、プチプチはほぼ「循環材」に近づきつつあるのだ。この98%という数字こそが、同社を原油価格の急激な変動から切り離し、政治リスク時代における一種の例外企業にしているのである。
リサイクル戦略の三つの柱
川上産業がリサイクルに本格的に取り組んだ背景には、単なる環境対応を超えた事業リスク管理の視点がある。同社の発信するストーリーは「捨てるから循環させるへ」というシンプルなメッセージでまとめられているが、その裏側には三つの論理があると整理できる。
第一に、原料リスクの遮断だ。プチプチの原料となるポリエチレンを中心としたプラスチック素材は、原油価格と為替の影響をもろに受ける。とくに気泡緩衝材は「輸送」を支える不可欠な商材でありながら、価格転嫁力は強くない。荷主企業にとって梱包材はあくまでコスト項目であり、物流コストは値下げ圧力こそあれ、「梱包材の値上げ」を理由に運賃を引き上げることは難しい。そこで川上産業は、国内で循環する再生材の比率を高めることで、原油価格が高騰する局面でもコストを一定程度吸収できる体制づくりに踏み出したのである。


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