台湾の高速鉄道は「台湾新幹線」とも呼ばれる。日本の新幹線システムを導入して2007年に開業し、南港(台北市)―左営(高雄市)間の348.5kmを約90分で結んでいる。現在の主力車両700Tは、東海道・山陽新幹線の700系をベースに開発された日本製の車両で、2004年から2015年にかけ34編成が製造された。
開業当初は新幹線の存在すら知らない人も多く、割高な運賃も敬遠され利用客数は伸び悩んだ。だが、半導体産業の発展に伴い台湾のGDPが急成長。人々の所得が増えるにつれて割高感は薄れ、誰もが気軽に乗れる交通手段となった。利用者数は開業時から5倍に増え、今では「直前で予約するとほぼ満席。3人がけシート中央のB席くらいしか空いていない」(台湾メディアの記者)という人気ぶりだ。現在の34編成だけでは増え続ける需要に対応しきれず、輸送力増強のため新型車両の導入を決断するに至った。
3回目の入札で受注
しかし、導入への道のりは決して平坦ではなかった。2017年6月、高鉄は国際入札による調達を決め、各国の主要メーカーに意向の打診を始めた。入札は2019年2月および2020年8月の2度にわたって行われたが、「メーカーが提示した価格と市場価格の差が大きいことや、入札書類の一部が要件を満たしていない」(高鉄)ことなどを原因として不調に終わった。
高鉄は戦略の見直しを行い、2022年3月に3回目の入札を実施。海外メーカーを含む複数の企業が入札に挑み、審査の結果、2023年5月に日立・東芝連合が約1240億円で受注した。
契約がすんなりと決まったわけではない。「(ドイツの大手メーカー)シーメンスとの熾烈な争いがあった」と日本台湾友好議員連盟の会長を務める古屋圭司衆議院議員がセレモニーの挨拶の場で明かした。かつて高速鉄道計画のスタート時点、ドイツ・フランスによる欧州連合が優先交渉権を獲得していたが、その後に日本が逆転受注したという歴史的経緯がある。シーメンスにとって今回の新型車両案件はいわば雪辱戦でもあったが、受注を勝ち取ることはできなかった。

