想定以上に成長したエンハーツ
――35年にがん領域で世界トップ5入りを目標としています。第一三共の現在地をどう認識していますか。
25年度までの5年間、「がんに強みを持つ先進的グローバル創薬企業」という企業像を描いて取り組んできた。この目標は、幸いにも実現できたのではないか。売上収益1.6兆円、がん領域だけで6000億円以上という目標に対し、結果は売上収益2兆1230億円、うちがん領域は9540億円と、いずれも大幅に上回った。
私たちの初めての抗体薬物複合体(ADC)が期待以上に大きく伸び、それを成長ドライバーにしてこのような業績を達成した。
――つまり、がん領域で目標値を上回ったのは抗がん剤「エンハーツ」によるものだと。
ほとんどエンハーツがもたらしたと言っていい。
がんの治療では、乳がん、肺がんといった各がん種の中でいくつかのサブグループが定義されていて、そのサブグループに合った薬剤を市場に出せるかが成功のカギを握る。エンハーツの最初の成長は、「HER2陽性」の乳がん患者に対し、先行品と比べてすばらしい有効性と安全性を示すことができたことから始まった。

しかし、エンハーツの優れた点はそれだけではなかった。エンハーツが登場する前には「HER2陽性」の患者か「HER2陰性」の患者という2分類しかなかったが、陰性と言われていた患者さんを「HER2低発現」や「超低発現」と、さらに細かくサブグループを特定する臨床開発を行った。
結果、それぞれで当初の目的に沿った臨床データを出すことができた。こうして、これまで「HER2陰性」とくくられていた患者さんに新たな治療の選択肢を提供できたことが、非常に大きく伸びた背景にある。乳がん以外のがんにも適応症を広げている。(胃がん、肺がんへの適応拡大に続き)今は「HER2高発現」の固形がんであれば、どのがん種でも使えるようになった。
2番目のADC製品であるダトロウェイも25年に発売し、順調に立ち上がってきている。もろもろの成功が、この9540億円を支えている。
この5年間で持続的な成長の基盤になるようなパイプラインを充実させることもできた。ADCというカテゴリーの中で「DXd-ADC」という独自のプラットフォーム技術を創出し、エンハーツだけで終わらずに、同じ技術を搭載した製品群の開発を進めている。臨床開発中のものも含めると、7つのADC製品群がある。
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