ここで重要なのは、これが工事の始まる前、設計段階で決まっていたということである。掘った土をどう処分するかを後から考えたのではない。地形のデザインと土の処理を最初からセットで設計したからこそ、1粒も捨てずに済んだ。
グーグルのBay Viewが「発電する屋根」や「地熱で冷暖房する基礎杭」という完成後に効き続ける設備で環境負荷を下げているのに対し、アップルのこの判断は建設工事という一過性の場面に向けられている。どちらが優れているという話ではなく、脱炭素をどの工程で捉えるかという着眼点の違いである。建物の運用時ではなく、建てる過程そのものを設計対象にした点が、アップルの特徴だ。
駐車場を地下に埋めて、敷地の8割を緑に戻した
土地の使い方も独特だ。Apple Parkの敷地は、80%が緑地などのオープンスペースで、建物が建っているのはわずか20%にすぎない。広大な芝生と、7000本以上の木々。掘り出した土で造られた丘には、いま木が根を張っている。廃棄物だったものが、緑を支える土台になっている。
面白いのは、前の持ち主との対比である。かつてここにあったHPのキャンパスは、まったく逆で「建物80%・緑20%」だった。同じ土地の使い方が、真逆にひっくり返っている。
どうやって実現したのか。答えはシンプルで、地上から駐車場を一掃したことだ。アメリカ、特に車社会のシリコンバレーでは、オフィスビルの周囲を広大な平面駐車場が取り囲むのが当たり前の光景である。アップルはそれを地下と立体駐車場に集約し、空いた地表面をまるごと自然に戻した。
敷地があまりに広いため、社員の移動には誰でも自由に使える共有自転車が約600台配備されている。これも、敷地内で車を使わせないための仕掛けの一つだ。
自然環境の回復という点では、グーグルもBay Viewで17エーカー超の在来種の植生を復元し、雨水と排水をすべて敷地内で処理して再利用する「ネットウォーターポジティブ」を掲げている。アプローチは似ているが、アップルの場合は「駐車場をどこに置くか」という、都市計画上きわめて基本的な選択を通じて緑地率を確保した点が異なる。特別な技術ではなく、配置の判断だけで敷地の8割を空けている。


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