例えば、しばしば語られますが、子ども向け作品らしからぬダークな面が見え隠れする点が挙げられます。
ちいかわたちの暮らす世界には「沸きどころ」といって、特定の食物が無制限に沸き出すスポットがいくつも存在するようです。
ですが、その一方で「労働」の文化が彼らには根付いています。しかも、定職についているわけではありません。西洋式の全身鎧を着こんだキャラクターがガランガランと大きな音をたてながら鐘を鳴らし、日雇い労働の募集をかけるのです。
労働内容は「草むしり」「採取」といったかわいらしいものから「討伐」など血なまぐさいものまで様々。
しかも、一番簡単そうに見える「草むしり」にも「草むしり検定」なる資格が存在し、この級位によって仕事できるエリアが決まるシビアなシステムがとられているのです。
ちなみに、「草むしり検定」と名前だけ聞けば簡単そうですが、作中で描写される限りでは、検定テキストの厚みは優に300ページはありそうですし、おそらく一番簡単な「草むしり検定5級」ですらも「絶対にむしってはいけない草」という禁忌択が登場するなど、我々が考えている以上にシビアなもののようです。おそらく、こちらでいう「危険物取扱者試験」のような位置づけも兼ねているのでしょう。
もちろん、こんなものに一発で受かるわけもなく、主人公のちいかわは何回か試験に落ちてしまいます。ただ、何度落ちてもめげず、自分より先に親友が合格してもくじけない姿は、小さな身体に秘められる熱い闘志と覚悟が垣間見えるようで、「自分ももう少し頑張ってみようかな」と思わされるものでした。
思えば、『ドラえもん』ののび太に若干重なる部分があるようにも感じます。のび太とは違って勤勉な一面を持つものの、「頑張っているのにちょっとだけ足りない」ことが多く、泣いたり、「イヤ!イヤ!」と叫んだり、みっともない顔を見せつつも、最後の越えてはいけない一線だけは死んでも食い下がる、まさに主人公スピリットを持つキャラクターなのです。
ちいかわの世界のダークな側面
ほかにも、ダークな面は存在します。先ほど、労働の中に「討伐」があるとお伝えしましたが、ちいかわの世界には、人々を取って食うような異形の化け物が跋扈しているのです。しかも、そいつらの中には愛らしい見た目に擬態している個体もいて、気付かないうちに遭遇してしまうこともあり、生活を脅かしています。
そのため、作中では、様々な困難に見舞われました。毎日悪夢を見せられて神経を削られたり、石にされかけたり、今日を繰り返すループに閉じ込められたり……。そのたびに、ちいかわたちは時に力を合わせ、時に見知らぬ他者の力を借り、はたまたやけくそで玉砕覚悟の突撃をかけることで、乗り越えてきたのです。

