このように日本の進化生物学や進化心理学の受容は欧米から数十年遅れており、一部の専門家を除けば、「人間の行動や感情は進化の産物である」という主張は“トンデモ科学”の一種か、さもなければ「差別」だと決めつけられていた。
本書を読むと、こうした事情は韓国でも同じようなものだったらしい。
アリストテレスの欺瞞
ソさんは本書で、「幸せのもっとも大きな決定要因は『遺伝』だ」と述べたうえで、ダーウィンとアリストテレスを比較しながら、軽妙な筆致で「不都合な真実」を次々と暴いていく。
アリストテレスは幸福(ユーダイモニア)こそが人間にとっての「最高の善」であり、究極の目的だと論じ、これが欧米の幸福論の基礎になった。
それに対してダーウィンは、人間もしょせん動物の一種だとして、幸福を生物学的に解明しようとする。
本書ではダーウィン説によりながらアリストテレス的な幸福論を批判していくのだが、その過程がとてもわかりやすい文章で、なおかつスリリングに書かれているので、私が屋上屋を架すような解説をする必要はないだろう。そこでここでは、補足として2点、書いてみたい。
ソさんがくり返し指摘するように、幸福研究では「外向的だと幸福度が高く、内向的だと幸福度が低い」という一貫した結果が出ている。
より正確には、外向的だと喜びや興奮、没入感のようなポジティブ感情が、不快や苦痛をともなうネガティブ感情よりも多くなる。
幸福を「ポジティブ感情-(マイナス)ネガティブ感情」と定義するなら、外向的な性格が幸福度に結びつくのは間違いない。

