まずは審査員の多くから高評価を得た【最優秀賞】から紹介する。
新卒採用において、企業側が最も重視しがちな「素直さ」や「成長意欲」。本来であれば数値化できないはずの極めてアナログで生身の人間的資質すらも、生成AIの普及によって精緻にパターン化し、自在に出力・最適化して応募できてしまう。現代就活の構造的な自己矛盾を鋭くついた秀逸な一句である。
かつては自己分析を重ねて絞り出していた「自己の強み」は、いまやプロンプト一つで「企業の求める人物像」へと瞬時に擬態させることができる。しかし、その合理性の裏では、目の前の選考を突破するために本来の自画像とは乖離したペルソナを量産せざるをえないという、現代の就活生が抱く実質的なアイデンティティの迷走と虚無感が「生成中」という無機質なシステム用語によって克明に浮き彫りにされている。
AIという直接的な単語をあえて一切用いずに、激変する選考現場のダイナミズムと学生の心理的葛藤をスマートに描写した着眼点は見事の一言に尽きる。技術に翻弄される現代社会の世相を鏡のように映し出し、高い文学的完成度と深い社会批評性をハイレベルで両立させた、本アワードの頂点にふさわしい圧巻の作品である。
親は善意でアドバイスするが…
続いて、【優秀賞】を紹介しよう。今年は2作品が選ばれた。
バブル期や平成初期の就職活動を経験した親世代による「熱意を見せるために直接オフィスへ足を運べ」「個性を前面に出して泥臭くアピールしろ」といった善意のアドバイスが、デジタル化とデータ選考が主流となった令和の採用システムにおいては、処理エラー(バグ)やミスマッチを招くノイズにしかなりえないという、世代間の決定的な価値観の断絶を鮮やかに切り取った一句。
ネットを介した一括エントリーやAIによる初期スクリーニング、オンライン面接といった、徹底的にシステム化・構造化された現代の就活仕様に対し、前時代の成功体験や精神論をそのまま持ち込むことの滑稽さと悲哀を、「バブル」と「バグ」という類似した語感を重ねる高度なテクニックでスマートに表現している。


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