また、1993年のJリーグ開幕の影響もあります。それまで日本のスポーツは、野球や武道に代表される「努力・忍耐・根性・自己犠牲・没個性」が至高の美徳でした。しかし、純粋にプレーを楽しみ個性を華やかに爆発させるJリーグのサッカー文化は、子どもたちや若者に「スポーツは楽しむものだ」という価値観を浸透させました。
そこには、1つひとつのプレーを監督やコーチの指示通りにおこなう野球と、大枠の戦術はあったとしても状況に応じて選手が臨機応変に判断してプレーするサッカーとの、文化の違いもありました。
また、コロナ禍における運動会の簡素化も大きなことでした。開閉会式が省略されたり、おこなうにしても行進はナシになったりしました。貴重な体育の時間や休み時間を潰して行進練習をする必要がなくなり、その結果教師たちは、行進練習はもとより行進そのものも実はなくても全然困らないこと気づきました。それで、コロナ禍の後も元の形に戻さない学校が多かったのです。
こうした変化の中で、2024年に佐賀県で開催された「国民スポーツ大会(SAGA2024)」が一つのエポックメイキングになりました。それまでの「国民体育大会」が「国民スポーツ大会」に名称変更されると同時に、開会式の入場スタイルも刷新され、整列しての軍隊式行進から自由な入場に変わったのです。
その背景には、大会の主役は都道府県という組織ではなく、選手1人ひとりであるという理念がありました。つまり、都道府県という組織の対抗戦というよりも、選手が自身の競技や記録に“挑戦”するものということです。ですから、入場も行進ではなく選手それぞれの楽しみ方や個性を尊重したいという考え方がありました。
軍隊式行進をしなかった聖愛高校
国民スポーツ大会の変化を受けて、2025年の高校野球の入場で軍隊式行進をしない学校が出るのではないかと、一部で期待されましたがそういう学校はありませんでした。
しかしながら、過去においては、軍隊式行進ではない入場をおこなった高校もあります。甲子園大会ではありませんが、2024年に青森市営野球場でおこなわれた夏の高校野球・青森県大会の開会式で、弘前学院聖愛高校は軍隊式行進ではない入場をおこないました。
他のすべての学校が軍隊式行進をする中、聖愛高校だけが帽子を取りスタンドに向かって笑顔で手を振りながら歩くという、オリンピックの選手入場のような入場をおこないました。

