「学生が特定の授業を欠席したとしても、翌日のほかの授業には出席しているのであれば、そこですかさず周囲の人が『昨日は欠席していたけど大丈夫?』『困っているなら言って』といった軽い声かけをする。そういった心理的ハードルの低い働きかけが有効です。教員だけでなく、授業をサポートするSA(スチューデント・アシスタント)、大学職員、場合によっては保護者や友人など、複数のチャネルを活用して多角的にプッシュすることで、学生が大学のコミュニティーに戻るきっかけをつくることができます」
そして、中退予防のもう1つの柱が、「初年次教育」だ。白鳥氏は、「初年次教育は、大学に入学してからスタートするものではない」と話す。
「オープンキャンパスや入試、入学前教育の段階から、大学での学び方を伝え、高校での学びから段階的に移行させることが重要です。『家から近い』『友達が行くから』といった理由で進学する学生に、いきなり高度な専門授業を課すのでは、大学生活そのものが苦痛になりかねません。少しずつ大学生にしてあげるケアが必要です。大学での学び方を理解させること、学習習慣を身に付けさせること、なぜ自分がその分野を学ぶのかを主体的に考えさせることが、初年次教育の核心だと言えます」
「多様な学生の受け入れ」前提の支援体制を
中退を防ぐには、大学全体のマクロな視点での教学マネジメントも問われる。個々の教員が熱心に対応するミクロなアプローチだけでは限界があるからだ。そのため、出欠や成績データを分析するIR部門が早期にアラートを出し、その情報を教職員で共有する流れを整えることが出発点となる。
こうした情報共有によって、誰がどの学生に声をかけるべきかを判断しやすくなり、前述した多角的な「ナッジ」も可能になる。そして、必要に応じて学生相談室やカウンセラーにつなぎ、メンタルケアのみならず授業の履修設計なども含めて支えていく。そうした組織的な仕組みが必要だ。
また、「大学は、多様な学生の受け入れを前提に、高校から大学への移行支援を強化する必要がある」と白鳥氏は指摘する。先進的な事例としては、通信制高校の出身者向けの入試を実施し、入学前から入学後まで包括的な支援体制を整えている大学や、平日の授業やキャンパスの様子を高校生が体験する「Weekday Campus Visit」を実施して高大のミスマッチ解消に取り組んでいる大学などがあるという。「実際、予防に取り組み中退率をかなり下げた大学もあります」と白鳥氏は話す。

