この方程式の原点は、2020年の『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』だった。
連続アニメ「鬼滅の刃」は、キー局のゴールデンタイムに依存しない放送形態でスタートした作品だ。さらに約20もの配信サービスに網羅的に展開されたことで視聴が拡大し、社会現象化した。
誰もがいつでも全話を追える状態が作られていたからこそ、劇場版は404億円という前人未到の数字に到達できた。テレビに頼らず、配信がファンの裾野を作った巨大な成功例だ。
『名探偵コナン』の映画シリーズでも配信がヒットを増幅した。映画公開に合わせて膨大な過去作(テレビシリーズと歴代劇場版)を計画的に配信展開するようになった。結果、かつて60億〜90億円台だったシリーズの興収水準は、23年以降100億円台へと一段レベルアップし、その流れが4年続いている。
25年の洋画興収トップ3は、1位『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』の52.8億円、2位『モアナと伝説の海2』の51.7億円、3位『ジュラシック・ワールド/復活の大地』の49億円。アニメに押された洋画退潮の中で上位を守ったのは、3作とも過去作を配信でいつでもさかのぼれるシリーズ作品だった。
進化する「シリーズもの」の系譜
そして、この方程式を最も戦略的に使ったのが、24年の実写邦画『ラストマイル』である。
同作はシリーズものではないが、TBSのドラマ『アンナチュラル』『MIU404』と世界観を共有する「シェアード・ユニバース」とうたい、劇中に両ドラマの登場人物たちを同じ役名で登場させた。そして、両ドラマは映画公開に合わせて配信サービスで視聴できる状態が整えられていた。
観客は映画を観る前に、あるいは観た後に、配信でドラマを追い、再び劇場に戻る。この循環によって、同作の興収は59億円を超えた。

