前出の吉村氏は、白井市を指して「先端技術の配電盤」と表現した。この背景には、台湾南部・台南市での取材経験がある。それは、最先端の半導体工場を誘致するということだけではなく、白井市の立地を生かして研究開発や物流、データセンターといった多様な先端技術と、それらを担う人材を育成させていく教育を結びつける拠点とすべきだ、ということだ。
「先端技術の配電盤」になれ!
配電盤は自ら電気を生み出す設備ではない。しかし、多くの設備や機能をつなぎ、全体を動かすという重要な役割を持っている。
参考となる台南市は、TSMCの先端半導体工場を擁する一方で、マンゴーの名産地としても知られ、先端産業と地域産業が共存する都市である。現在、台湾高速鉄道(台湾新幹線)の台南駅周辺には、政府主導で大学などの教育機関を含むサイエンスパークが整備され、産学連携による人材育成が進められている。
台湾のサイエンスパーク構想は、蒋経国政権時代に北部・新竹でアメリカのシリコンバレーをモデルとして国内外から企業や技術者を集めたことに始まり、TSMCも新竹で操業を開始した。その後、産業集積は南部へと拡大し、2025年の売上高では南部サイエンスパーク(高雄・台南)が約2.9兆台湾ドル(約14.5兆円)となり、新竹サイエンスパークの約1.7倍に達した。こうして台南は、台湾を代表するハイテク産業の中心地の1つへと発展している。
このような産業・教育・地域が連携する仕組みは日本でも大いに参考になる。成田国際空港に近く、東京都心から約1時間でアクセスできる白井市をはじめ北総地域も、研究機関や教育、人材育成を結ぶ「先端技術の配電盤」として発展する可能性が十分にあると考える。
一方で、白井市や印西市ではデータセンターの建設をめぐって建設反対を叫ぶ運動が増えている。居住環境への懸念も無視できない論点だ。データセンターからの税収を自治体は期待する一方で、住民にとっての恩恵が直接見えないことも否定できない。
そこで、企業は社会貢献や地域支援を「コスト」として考えるのではなく、「未来への投資」として考えることはできないだろうか。

