もちろん、OEM生産はほかに模倣されないレベルでの製造技術や品質が伴わなければ、価格競争で劣後するというリスクがある。そういった壁を、台湾の技術者たちが乗り越えたという事実も知っておくべきだろう。
半導体メーカーの多くは自社ブランドのものを製造したうえで、ほかの企業にも部品を提供するスタンスをとっていた。例えば2011年ごろから18年ごろまで続いたアメリカのアップル社と韓国のサムスン電子との間の特許訴訟では、アップル社が実際にサムスン電子の部品を使用していたこともあり、部品提供先がライバルになるリスクなどが浮き彫りにされた。
そこでTSMCは、自社ブランドを持たず、純粋な製造(ピュアプレイ・ファウンドリー)に徹した。上記のようなリスクを回避できるためである。競争するよりは自分たちの役割を見つけていたという「知恵」が功を奏したといえるだろう。
日本の人材育成・地方創生に台湾の知恵を生かす
これまで示してきた台湾の「知恵」、すなわち競合を極力避けながら自分たちの役割を見つけていくという取り組みは、地方自治の地方創生をバージョンアップさせる重要な核にならないか。地方創生は自治体同士が同じ産業を奪い合うといった競争だけでは成り立たない。
それぞれの地域が自身の強みを生かし、役割を分担しながら勝ちを高める「共創」の視点がこれまで以上に求められているのではないか。
筆者の住む千葉県白井市は人口約6万、千葉県北西部の北総地域に位置し、成田国際空港と東京都心の中間にある。隣接する印西市と同様にデータセンターの集積が進む一方で、白井市は人口減少や全国平均よりも少子高齢化が早く進むという課題に直面している。だからこそ、危機を乗り越え、生き残る知恵を生かし、今後少なくとも20年先を見据えたビジョンが必要だ。

