会場にはJR東海の宇野護副会長の姿もあった。宇野氏は長年にわたってリニアを担当し、国の有識者会議にも説明責任者として出席してきた。穏やかな人柄で、有識者会議終了後に行われる囲み取材では、時には理不尽とも思われる報道陣の質問に対しても丁寧な口調で答えていた姿が印象的だった。
大井川流域10市町(島田市、焼津市、掛川市、藤枝市、袋井市、御前崎市、菊川市、牧之原市、吉田町、川根本町)のトップも出席した。
JRと「直接対話」続けた流域市町
川勝氏は「流域住民の声」を振りかざしてJR東海と対峙してきたが、島田市の染谷絹代市長は「私たちはJR東海から直接話を聞きたい」と一貫して主張してきた。JR東海と流域市町の意見交換会は2021年9月の初開催以来、7回にわたって開催。直接対話が実現すると、JR東海と流域市町の首長らの間で理解が進み、川勝氏ははしごをはずされた格好となった。染谷市長は、「約12年の長きにわたってさまざまな議論を交わしてきた。科学的工学的な議論に一区切りつき、一番最初からかかわってきた者として感慨深い」と述べた。
流域市町はつねに足並みをそろえてきた。これまで行われてきたJR東海との意見交換会でも、囲み取材の場ではいつも首長らが横一列に並んで取材を受けていた姿が印象に残る。藤枝市の北村正平市長は「流域全体で話をするときは、首長が1人でも都合が悪いときは会を開かず、すべての意見を一致させようということで今日までやってきた。各首長さんのご苦労は大きかったと思う」と明かした。
静岡市の難波喬司市長も同席した。難波氏は2014年から2022年まで県の副知事としてリニア問題を担当してきた。副知事就任前は国交省で技術総括参事官を務めており、トンネル掘削の技術には明るい。それだけに、JR東海が提出した工事に関する資料の問題点を次々と指摘し、わかりやすい説明を求めてきた。感情的ともいえる川勝氏の発言を理論で補強する、川勝氏の軍師的な存在だった。一方で、「工事はつねにリスクを伴い、ゼロリスクはない」という考え方を取り、「ノーリスク」を求める川勝氏と異なり、現実派であった。

