水資源や自然環境をめぐるJR東海との協議の場として、県は2018年に専門部会を設置した。しかし、そこでの議論は平行線をたどり、対話の完了には至らない。その結果、2027年開業という計画は水泡に帰した。
その川勝氏は2024年に不適切発言で辞任、新たに就任した鈴木康友知事のもとで県とJR東海の間で議論がスムーズに進み出した。そして、7月18日、鈴木知事とJR東海の丹羽俊介社長による協定締結式に至った。
協定では、JR東海が工事区域内の自然環境保全措置を講じること、不測の事態が起きたときは工事を一時中断して因果関係がない場合を除き、JR東海が対策を講じることが求められている。
9年の議論に終止符
また、今回の締結式に先立ち1月24日に県とJR東海が結んだ大井川に関する「水利用への影響が生じた場合に係る確認事項」において、JR東海は機能回復や水利用継続に向けた措置を適切に講じること、当該措置で対応が困難な場合は費用負担等の補償を行うこと、これらについては期限や限度を定めず、因果関係の立証も利水関係者や県に求めない、といった約束が取り交わされた。今回の協定と1月24日の確認書をもって、9年の議論に終止符が打たれたことになる。
今後は環境保全措置の実効性を担保するため、国と県がそれぞれモニタリング体制を立ち上げており、JR東海は着工後においても、継続的にモニタリングを実施し、国と県に結果報告を行うこととしている。
締結式の壇上には、鈴木知事、丹羽社長とともに、来賓として国土交通省の水嶋智事務次官が並んだ。リニアを所管する国交省のトップとして出席したが、水嶋氏は鉄道局長を務めていた2020年、国の有識者会議を立ち上げるなど、県とJR東海の対立解消に汗をかいてきた。
しかし、会議の運営方法に納得がいかない川勝氏から定例記者会見の場において名指しで「あきれはてている」「猛省してほしい」「恥を知れ」と誹謗中傷され、くやしくて眠れなかった日々もあったという。あれから6年、水嶋氏の苦労がようやく報われた。

