意外に見落とされがちなのが京都だ。京都は歴史的な都市景観や文化的価値から「安全な内陸都市」という印象を持たれやすいが、実際には周辺に活断層が分布し、過去にも複数の地震被害を経験してきた。内陸に位置する点だけを理由に、地震リスクが低いと判断することはできない。
京都の事例が示すように、日本では大地震のリスクを完全に避けられる地域は存在しない。したがって、副首都の選定で問われるべきなのは「絶対に安全な場所はどこか」という非現実的な問いではなく、「国家機能を継続する観点から、どの地域が相対的に適しているか」という比較だ。
その観点から、ここでは岡山を1つのわかりやすい事例として取り上げたい。
岡山は東京との共倒れを回避できるか
岡山は、大阪、名古屋、福岡、札幌のように、これまで副首都候補として全国的な議論の中心になってきた地域ではない。しかし、前述した副首都に求められる条件、すなわち東京との同時被災リスクの低減、災害リスクの抑制、交通・産業・生活基盤の確保という観点から見ると、検討対象として重要な特徴を備える地域だ。内陸部の高原地帯だけでなく、岡山市の平野部も活断層の分布が少なく、地盤が比較的安定している点も、災害時の中枢機能の維持という観点から評価される。
ここで岡山を取り上げるのは、「岡山だけが安全だから」ではなく、これらの条件を具体的に当てはめた場合にどのような地域が候補となりうるのかを考えるうえで、わかりやすい事例となるからだ。
むろん、岡山も無傷ではない。県北部の断層地震(2000年鳥取県西部地震など)や18年の西日本豪雨による浸水被害はその証左であり、以下は「絶対安全」ではなく、東京との同時被災を避けるという一点に絞った相対評価だ。瀬戸内海は津波が減衰しやすく、南海トラフ大地震でも四国の太平洋岸ほどの壊滅的津波は想定されていない。
岡山の強みは、都市機能と内陸拠点を組み合わせられる点だ。岡山市は新幹線駅を有し、広域交通の結節点として機能する。また、岡山桃太郎空港を備え、陸上・航空双方のアクセスを確保できる。都市部の多くが内陸に広がり、沿岸部より揺れや液状化のリスクが低い。
産業面では、水島臨海工業地帯を中心とした製造業の集積があり、瀬戸内地域のものづくり基盤を支える。さらに、船舶用プロペラメーカーであるナカシマプロペラは、世界市場で3割のシェアを持つ企業であり、高度な船舶関連技術が集積する地域といえる。
こうした産業基盤は、官民で1兆円以上を投資し、建造量を35年に24年比で倍にする造船大国復活プロジェクトに貢献できるだけでなく、有事における生産・物流機能の維持という観点からも重要だ。

